禁煙の宿で注意された客が「低評価」 “逆ギレ口コミ”をどう防げばいいのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
山形県の「西屋」という老舗旅館で、ちょっとしたトラブルがあった。館内は「禁煙」なのに、50代の客がタバコをプカプカ吸っていたのだ。旅館が注意したところ、その客は口コミで反撃してきて……。
「遅延作戦」を実行
では、どうするか。実はシンプルかつ、それほど面倒なシステムも必要なく、すぐに実行できる対策がひとつある。それは客が口コミを投稿してから、実際にアップロードされるまである程度の時間がかかる「遅延作戦」を実行するのだ。
例えば、飲食店や旅館からマナーの悪さを注意された客がいたとしよう。その場では黙って受け入れたが、プライドを傷つけられたので頭にカッと血がのぼっている。そこで勢いに任せて口コミサイトに、「最悪な接客でした」「もう二度と行きません」と書き込む――というのが一般的な逆ギレ口コミの流れだ。
そこでもしも「冷却期間」があったらどうか。つまり、頭に血がのぼって口コミサイトに悪口を書き込んでも、すぐにそれがアップされないのだ。書き込んでから1〜2日経過すると、スマホに何度も「本当にこの内容で大丈夫ですか?」と通知がくる。
第三者から確認されることで、客側も「ちょっと言い過ぎかな」とか「過ぎたことだしもういいか」という感じで、頭を冷やすことができる。そこで、こんな書き込みをしても不毛なだけだ、と逆ギレ口コミを引っ込めるというワケだ。
「そんなにうまくいくわけないだろ」と思うだろう。しかし、実際にこの遅延作戦でレビューテロの防止で効果を上げている事例がある。
それは「Amazon Prime」だ。
映画やドラマではレビューテロが多い。最近で分かりやすいのは『リトル・マーメイド』だ。主人公アリエルを黒人女性が演じたことで論争を呼び、さまざまな国でネガティブな書き込みが多くなされた。これは映画を実際に視聴した人の感想ではなく、特定の思想信条をもった人々や単なるストレス発散で叩く人々、いわゆる「インターネットトロール」(荒らし)が主導していると分析をしているメディアもあるほどだ。
こういう理不尽な荒らし行為を防ぐため、米Amazon Primeが昨年9月に打ち出した新戦略が、遅延作戦だ。作品のレビューを投稿するには、あらゆるユーザーが72時間待たなければならないのだ。このようなタイムラグを持つことで面倒くさくなったり、クールダウンをしたりして「もういいや」と離脱するワケだ。
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