“悪文”でも伝わるのはなぜか 大切なことは:伝えたいこと(2/3 ページ)
文章がうまくなくても、他人に伝わることがある。どのようにすれば、分かりやすく伝えることができるかというと……。
“悪文”でも伝わるのはなぜ?
具体的な例で考えてみましょう。
例えば、高名な教育者の講演会があって、そこに参加した人から、会場で配られたアンケート用紙につぎのような感想が書かれていたとします。
今朝は久方ぶりに高く晴れた空を見上げながら、秋色に萌ゆる銀杏並木の道を一歩々々、踏みしめるように会場に参りました。初めて拝見した先生の御姿は清々しく、それでいて威厳に満ちていました。会場に響き渡る声は美しく澄み渡り、どこまでも凜としていました。このような希有な機会を頂戴致しましたこと、心より感謝申し上げます。御縁がございましたら、また是非とも御話を拝聴させていただきたく存じます。
実はこれは、ぼくが実際に見かけた文章に少しだけ手を入れたものなのですが……これを読んで、どのように感じるでしょうか?
なにやら高尚な言葉が並んでいて格調が高そうで、文章として“それらしさ”のようなものはあります。言葉づかいもていねいで個々の文の意味は理解しやすいかもしれません。
ただ、書かれている事柄に一貫性はなく、後半にいたっては定型に近いあいさつ文が並んでいるだけです。残念ながら、「書き手がなにを伝えようとしているのか」はよく分かりません。
社交辞令として、あたりさわりなく、お茶をにごしたいのであればいいかもしれませんが、これを読んだ人が納得や共感を覚えること(気持ちやこころを動かすこと)は、あまり期待できません。
では、同じ講演会の感想として、次のような文章が寄せられたらどうでしょうか。
めちゃくちゃ反省。涙が出ました。やっぱり人は大事にしなくちゃです。ありがとうございました。
決してうまい文章ではありません。言葉づかいはどちらかといえば雑だし、内容も断片的で、情報量も十分ではないかもしれない。文章のロジックにも危ういところがあります。
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