JTは法務部門をどう変えたのか リーガルテック導入の先駆者が語る「攻めの法務」になる秘訣
規制の厳しいたばこ製品を世界各地で展開しているJT。同社の“要”といえるのが法務部門だろう。同社ではDX推進が叫ばれる何年も前からリーガルテックを導入し、業務効率化を図ってきた
突然だが、日本たばこ産業(以下、JT)と聞いてどんな会社をイメージするだろうか。「たばこの会社」「旧専売公社」――こう連想する人が多いのではないだろうか。
もちろん間違いではないが、同社は今や日本を代表するグローバル企業だ。1999年には米RJRナビスコ社から米国外たばこ事業を、2007年には英ギャラハー社を買収し「キャメル」「ウィンストン」といった世界でも名の知れたブランドを傘下に収めた。また22年1月には、日本市場を含むたばこ事業の本社機能を海外事業の拠点があるスイスのジュネーブに統合した。
規制の厳しい製品ながら、世界各地で事業展開できたのは法務部門の役割が大きいだろう。そんなJTでは、DX推進が叫ばれる何年も前からリーガルテックを導入し、業務効率化を図ってきたという。
どのようにデジタル化を推進したのか。本記事では、ITmedia ビジネスオンライン・ITmedia NEWSが2023年8月22日から開催するオンラインイベント「Digital Business Days -SaaS EXPO- 2023 Summer」に登壇したJT 稲村誠氏の講演内容を一部先んじてお届けする。
自分たちの仕事が楽になるかもしれない
稲村誠(イナムラ マコト)日本たばこ産業 日本マーケット 部長代理(法務担当)。1999年、日本たばこ産業入社。2000年より法務部に在籍し、主に訴訟、規制対応、人事労務、株主総会及びコーポレート・ガバナンスを担当。2016年にたばこ事業部門の法務チームへ異動し、以降同チームの責任者として日本マーケットでのたばこ事業全般に係る法務案件を担当
リーガルテックを導入した背景として稲村氏は、「AIでの契約書レビューを知って、新しい技術が出たらしい、自分たちの仕事が楽になるかもしれない、という興味本位で活用を模索し始めた」と振り返る。決してDX推進といった仰々しい構えではなく「結果的にそうなっただけ」(稲村氏)と笑顔を見せる。
そんな同社の法務部門では18年ごろに「AI契約書レビュー支援ツール」を導入。その後、オンラインの法律図書・雑誌のサブスクサービスや、法務相談専用のプラットフォームの構築・運用を進めた。
これらの取り組みがコロナ禍での円滑なテレワーク導入に寄与したのは言うまでもない。また今後は「ChatGPT」などの活用も検討しているという。
気になるのが、会社や従業員をどう説得し、DXを業務に落とし込んだのかという点だ。DX推進が叫ばれる現代においても、予算が潤沢にある企業は少なく、ましてやバックオフィス関連の部門ではDXの推進が後回しにされがちだ。
法務DXを円滑に進める方法
この問いに対し、稲村氏は「自分たちの業務に適したサービスを小さく試してみることから始めることが重要」と話す。ツールを導入するだけで業務が効率化するわけではない。どう活用できるのか、本当に必要なことは何かを考えながら、検討を始めてみるのが大事かもしれない。
また日々AI技術は進歩している。「法務業務にどう影響を与えるか理解し、将来のリスクヘッジという意味でも、生成AIの動向には気を配り、遊び程度でもいいので触れておくことが重要」と締めくくる。
講演では、JTが進める実際の法務業務の中身や、部門内での意識改革について、詳しく解説する。その内容はオンラインイベントの無料講演で確認してほしい。
また、期間中であればいつでも視聴できるスペシャルステージ(全体基調講演)では、リクルート HR統括編集長の藤井薫氏と、週休3日制度を導入している企業のキーパーソンである日本IBM 作田航氏、元湯陣屋 女将 宮崎知子氏を招き「日本で『週休3日』は当たり前になるのか 導入企業が語る現在地」と題したトークセッションをお届けする。
これら全講演は、アーカイブ配信を含めイベント会期中であればいつでも視聴できる。以下ボタンからの事前登録(無料)の上、チェックしてほしい。
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