「伝える」と「伝わる」は、どう違うのか
さて、「伝え方」の話をさらに先に進めていく前に、言葉の定義を確認させてください。
「伝える」と「伝わる」について、です。
やや曖昧なまま、「伝える」「伝わる」という言葉を用いてきましたが、この2つの言葉は、見た目は似ていても、意味するところは全く異なります。一番の違いは「動作の主体」です。
「伝える」は、誰かに向かって自分の主張や情報を投げかける行為のこと。動作の主体は、文章でいえば書き手、お話でいえば話者です。
これに対して「伝わる」の主体は、文章でいえば読み手、お話でいえば聞き手。基本的には投げかけられた主張や情報を受けとめる行為を意味しますが、でも、ただシンプルに受けとめるだけではなく、「受け手」の内面に、なにかしらの影響が及ぼされます。
辞書に書かれている「伝わる」の意味は、もう少し客観的な現象としての伝達に近いものかもしれませんが、いまここで取り上げたい「伝わる」は、人の内面への作用も含めたニュアンスです。
具体的にいうと、ぼくは受け手に「納得以上」が起こったときに「伝わった」と評価することにしています。
そもそもの話ですが、文章やお話を読んだり、聞いたりした先に起こる受け手の反応には、大きく分けて3つの段階があります。
ひとつは「理解する」。読んだり、聞いたりしたものについて知的に分かるという段階。
その次が「納得する」。理解したものを解釈して、そのとおりだと知的に肯定する段階。
そして、その先にあるのが「共感する」です。知的に肯定したうえに、感情的にも同調する段階。
例えば、友だちから「会社で上司のパワハラにあっている」という話をつぶさに聞いて、状況や事実関係を把握して「分かった」となるのが「理解」のレベルです。
そのうえで話の内容を咀嚼して、「それは不条理な事態だね」「きみのいうとおりだよ」と知的に肯定するのが「納得」のレベル。
さらに、そこに感情移入して、「それはつらいな」「ぼくだったら逃げだしているよ」と同調するのが「共感」です。
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