YouTube激変で赤字転落「UUUM」 背景に「損したくない」Z世代の感情?:廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(3/3 ページ)
UUUMが過去最高の赤字を計上した。減収の要因の一つは、短尺のYouTubeショートの再生回数増に伴い、長尺の動画の再生回数が当初の想定を下回ったことだ。短尺動画が支持される背景には、Z世代特有の感情があるようだ。
一方、ヒカキンさんが今年1月に投稿した動画「YouTubeチャンネルの収益が下がっているのか検証」によると、1200万回再生以上のヒット動画を連発させていた20年に比べて、22年の収益は上昇していたと語っている。ヒカキンさんは、要因として広告単価の上昇と1再生数当たりの収益の増加を挙げている。逆境をものともせず、収益が増加しているヒカキンさんがいるのも確かだが、UUUMのように一部のトップクリエイターのアドセンス(YouTubeから受け取る収益)頼みの構造になっている事務所は、稼ぎ頭が失速すると大きなリスクになる。
かといって、YouTuberが自身で企画したグッズなど、P2C(Person to Consumer)商品を展開し、ファンの応援消費を喚起するブランド戦略は、視聴者層の経済力に左右される。人気YouTuberのファン層は若年層が多いため、過剰なグッズ販売は負担が大きい。
アドセンスやグッズに頼らずとも収益を伸ばすには、「芸能人と同様、YouTuberはインフルエンサーの位置付けであり、事務所にとっての商品である」ということを再認識することにあるだろう。ベネッセコーポレーションが昨年12月に発表した「小学生がなりたい職業」は、YouTuberが3年連続で1位だった。YouTuberというインフルエンサーが、現代のコンテンツ市場で大きな影響力を持っていることは言うまでもない。YouTuber事務所は、自社の看板であるYouTuberを活用し、いかにしてインフルエンサーマーケティングの領域を開拓、拡大していくかが求められるだろう。
著者紹介:廣瀬涼
1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。
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