大正製薬がサントリーを痛烈批判! 「業界の慣習を守れ」リリースは、なぜ世間に響かないのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
大正製薬のリリースが物議を醸している。サッカーの三浦知良のCM起用をめぐって、サントリーウエルネスを批判しているわけだが、いまひとつ共感を得られていない。その理由は……。
世間に響かない3つのポイント
では、大正製薬の捨て身の「問題提起」は、なぜ世間の人々の心に響かないのか。いろいろなご意見があるだろうが、筆者は主に以下の3つのポイントが大きいと思っている。
(1)「三浦選手=リポビタンD」のイメージが強くない
(2)「リポビタンシリーズ」という「社内論理」にピンとこない
(3)「ワンマン経営」の印象のほうが強くなって主張がかすんだ
まず(1)に関してだが、このニュースが配信されてから多くの人が「カズにリポDのイメージがなかった」と驚いている人もいるように、16年からリポビタンDに起用され続けているわりには、「リポDの顔」というほどイメージキャラクターとして社会に定着していたとは言い難い。現在、リポビタンDXの広告に出演している俳優のケイン・コスギさんのほうが「ファイト一発感」がある。
むしろ、三浦選手の若いころの活躍をリアルタイムで見て、「まだ現役なんてスゴい」とリスペクトしている40〜50代からすれば、90年代に出演していたサントリーの飲料水「デカビタC」のイメージが強いだろう。
もしリポビタンDに関しても、このデカビタCほどキャラクターイメージが定着していれば「これまで散々お世話になってきたのに、競合のCMに出演するなんて恩知らずだ」という批判がもうちょっと盛り上がった。つまり、大正製薬が世に訴えたかった「業界の慣習を揺るがす非常識な行為」という糾弾メッセージも今以上に共感を得ていただろう。
次に(2)の『「リポビタンシリーズ」という「社内論理」にピンとこない』を説明しよう。実はこれは今回のトラブルの本質的な部分だ。
大正製薬の主張を見ると、トラブルの発端となっている錠剤リポビタンDXは、リポビタンシリーズの一環であり、三浦選手はリポビタンシリーズと契約をしているので当然、リポビタンDXの広告にも出演するべきだという。
ただ、これはかなり微妙な話だ。三浦選手がリポビタンDに出演するために広告契約を結んだ16年、まだこの錠剤は世に存在しなかったからだ。リポビタンDXは、20年10月1日に発売されたのだ。
関連記事
- なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点
テレビCMでお馴染みのビッグモーターの不正が明らかになった。保険金を水増し請求するために、信じられない行為が行われていたわけだが、なぜ「買取台数日本一」の企業が不正を働いたのか。ビッグモーター、レオパレス、大東建託には共通点があって……。 - ビッグモーターの“叱責LINE”に驚愕 なぜ社長の息子は「恐怖政治」にハマったのか
ビッグモーター騒動が収まらない。兼重宏一前副社長の「恐怖政治」に注目が集まっているが、なぜ“叱責LINE”などを行っていたのか。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景
トヨタのプリウスをネットで検索すると、批判的なコメントが多い。ドライブレコーダーの交通事故や暴走ドライバーの動画を目にすることが多いが、なぜプリウスは標的にされるのか。背景を探っていくと……。 - マツダの「CX-5」はどうなるのか 思い切って刷新できない事情
「CX-5」が好調のマツダだが、根深い問題を抱えている。解決策として考えられる3つの選択肢と合わせて見ていこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.