大正製薬がサントリーを痛烈批判! 「業界の慣習を守れ」リリースは、なぜ世間に響かないのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
大正製薬のリリースが物議を醸している。サッカーの三浦知良のCM起用をめぐって、サントリーウエルネスを批判しているわけだが、いまひとつ共感を得られていない。その理由は……。
「天の声」の意向が強く影響
最後の3つ目のポイントは『「ワンマン経営」の印象のほうが強くなって主張がかすんだ』である。ネットやSNSで多くの人が指摘しているように、このように痛烈に広告タレントや、競合他社を批判するような感情的なリリースは、「天の声」の意向が強く影響している。つまり、社長だ。
確かに、サントリーウエルネスというライバル会社への公然の批判や、国民的な人気を誇るアスリート広告のビジネススタンスに苦言を呈するのは、その企業全体のブランドイメージに直結するので、現場の部課長レベルが独断でやれる話ではない。
では、誰かというと、大正製薬の場合、名誉会長、会長、社長、副社長まですべて占める創業一族、上原家だ。あのエモーショナルなリリースの文面は、上原家の「激しい怒り」がそのまま反映されている、と言っていいだろう。
このような傾向は、同族支配が強いとか、経営者がワンマンであればあるほど顕著にあらわれる。
分かりやすいのが、健康食品大手DHCの前会長である吉田嘉明氏だ。20年12月、DHC公式オンラインショップ上に吉田氏名義で、サプリメント売り上げトップのサントリーに対して、こんな声明を公開し、大きな批判を浴びた。
『サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員コリアン系日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントを始め、すべてが純粋な日本人です』
当たり前だが、これは創業者でDHCの株を全て握っていた吉田氏だからこそできた。もし社内の出世レースを勝ち抜いたサラリーマン社長がこんな文書をアップしようとしたら、すぐに会長や相談役が苦言を呈するだろう。側近も「これはちょっと……」と諌(いさ)めるだろう。ライバル会社をボロカスに叩くなんてことは「ワンマン経営者」にしかできないのだ。
それはスポーツ選手やタレントへの厳しい対応も同じだ。吉田氏は04年から日本プロボウリング協会のスポンサーとなっていた。女子ツアーの冠イベントなどを開催するほど力を入れて支援してきた。しかし、それが09年6月に突然、資金支援もツアーも中止される。この背景について、月刊誌『FACTA』がこう報じている。
『理由は単純。協会の中山律子会長が、サントリーの健康食品CMに出演したこと。吉田会長が激怒し、即座に打ち切りになった』(FACTA 2014年5月号)
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