どうするGap 思い出深い銀座の旗艦店は閉店 このまま日本からも撤退してしまいそうな苦しい事情:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/4 ページ)
7月に銀座の旗艦店を閉じたGAP。コロナ禍の影響も指摘されるが、長らく苦境が続いていた。北米で期待感のある事業も日本ではなかなか難しそうな事情があり、このままいけば日本撤退もありそうだ。
SPA(製造小売業、Speciality store retailer of Private lavel Apparel)という言葉がある。ギャップが1986年に提唱したビジネスモデルだ。衣料品の企画・製造・販売を一貫して行うことで、全ての工程を最適化するとともにロスを最小化。中間流通をなくして、低価格かつ高品質の商品を消費者に届けることが可能になる。
伝統的なアパレルでは、中間にいくつかの卸売業者が介在していた。しかし、ギャップの成功以来は特に大衆商品でSPAが世界のアパレルにおける主流となっている。ザラもユニクロも、H&Mも、もちろんSPAを実践している企業だ。
アパレルのビジネスモデルを変えたギャップは、どうしてズルズルと後退してしまっているのだろうか。
「コロナ禍」今や過去のもの?
ギャップの銀座撤退は、コロナ禍による外出自粛の影響によるもので、都心部の店舗の販売不振は仕方ないという見方もあるだろう。しかし、ちょっと待ってもらいたい。
日本のアパレル企業は、コロナによる緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が終了した22年春以降は急速に売り上げを回復している。トップ3の連結売上を見てみると次の通りだ。
ユニクロ、GUを展開するファーストリテイリングの22年8月期における売り上げは、2兆3011億円(前年同期比7.9%増)で、過去最高となった。しまむらも、23年2月期の売り上げが6161億円(同5.6%増)で過去最高。アダストリアも23年2月期の売上高が2426億円(同20.3%増)となり、同じく過去最高を更新している。3社は直近に発表した決算でも、過去最高益も叩き出した。
百貨店やファッションビルを主力とするワールドホールディングスも、23年3月期の売り上げが2142億円(同25.0%増)で営業利益も116億円を記録している。コロナ前である19年3月期の売り上げ2498億円には届かないが、V字回復を果たしつつある。
競合が復調を果たす中で、アパレルの在り方を変えてしまうほどの革新性を持っていたギャップが、日本で苦戦しているのは納得できない。
ギャップは日本でのパフォーマンスを近年どんどん落としているのが実態だ。
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