店舗予算は「分かりません」 数字を知らないキャンディ店、社長はどう変えた?(2/3 ページ)
店舗予算は「分かりません」「日々頑張ります」――アメ細工のパフォーマンスで若者から人気を得ている「PAPABUBBLE」だが、経営はアナログで行き当たりばったりだった。そんな中、4月に代表に就任したのは電通やゴンチャジャパンでマーケティングを極めてきた越智大志氏。就任後5カ月で、会社はどう変わったのか。
「お客さんはどんな人で、どのくらいいるのか」を知る
次に注力したのが、顧客とのつながりの創出だ。
「入社時に社員と話した際に『ファンがすごく多いんです、月に何回も来てくれるお客さんもいるんです』と伝えてもらったのですが『実際、ファンの方は何回来ているの? そういったお客さんは何人くらいいて、どのくらい買ってくれるお客さんなの?』と踏み込んで聞くと、やはり『分かりません』と。これだと、あまりにもお客さんのことを知らなさすぎると思いました」と越智氏は振り返る。
そんな状況を改善するため、進めたのがLINEとの購買データの紐づけだ。
6月末に施策を開始し、2カ月弱で登録者は6万人ほど。1年後には50万人の登録を目指していくという。
「小売りや外食など、どのリアルビジネスにも共通して重要なのは『お客さんとつながる・呼び込むということを何度も繰り返し、ファンになってもらう。ファンになったお客さんが、新たなお客さんを連れてきてくれる』といった好循環を作れるかどうかです。この好循環を作るために、デジタルを整備することは必要不可欠です」
「体験」を売ることで、中野店売り上げは1.65倍に
「さらにデジタル化で期待できることは、ビジネスチャネルをどれだけ増やせるか、ということです。当社では『キャンディを売って終わり』ではなく『もっと店舗での体験をビジネスにできないか』と考え、夏休み期間の施策として体験の販売を始めました」
具体的には、遊びの予約サイトである「アソビュー!」でロリポップ作りの体験アクティビティを販売。物販の売り上げは微増、そこに体験での売り上げが上乗せされたことで、7月20〜8月15日の売り上げが昨年同期比165%に成長した。
「既存のビジネスにコト消費を加えるだけで、165%の売り上げになったことは非常にわくわくする成果でした。もっとこうした取り組みを増やせないかと考えています」
さらに、デリバリーも開始した。「まだ日本ではデリバリーというと外食店からの配達を想像されると思いますが、海外では小売店からのデリバリーが当たり前になりつつあります。これに私たちもいち早く参入しようと思いました」
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