店舗予算は「分かりません」 数字を知らないキャンディ店、社長はどう変えた?(3/3 ページ)
店舗予算は「分かりません」「日々頑張ります」――アメ細工のパフォーマンスで若者から人気を得ている「PAPABUBBLE」だが、経営はアナログで行き当たりばったりだった。そんな中、4月に代表に就任したのは電通やゴンチャジャパンでマーケティングを極めてきた越智大志氏。就任後5カ月で、会社はどう変わったのか。
「見る」「目標を立てる」「追いかける」
すさまじいスピードで進むPAPABUBBLEの改革だが、全てが始めからうまく行っているわけではない。
経営を可視化したダッシュボードで確認できる数値の中で、PAPABUBBLEが最も重んじているのは社員のモチベーションだ。越智氏は「キッチンでのパフォーマンスが売りの会社だからこそ、(モチベーションが)経営の一番大切なKPIです」と話すものの、ここ数カ月はこの数値が下がってしまっている。
越智氏はこの現状を「5月に社内に向けて今後の方針と戦略を語りました。その直後は高い状態だったモチベーションが、現在下がってきてしまっています。原因を探ったところ、ロジスティクスセンターで空調の故障があり、夏なのに暑い思いをしていたことや、関西の店舗で人手不足が深刻であることなどが見えてきました」と分析。
状況としては良くないものの、こうした結果から原因をすぐに見つけて対処できるようになった状況を肯定的に受け止めているという。
「現在こうした問題があると分かり『申し訳なかった、すぐになんとかしよう』と判断できるようになりました。次にこうしてお話するときには『この数値が上がりました』と言えるように、頑張ろうと思います」
越智氏は、小売りブランドのデジタル化において大事なことは以下の3つのステップだと話す。まずは現状の数字やデータを「見る」こと、そして「目標を立て」て、それを「追いかける」ことだ。
現場は本部の計画が分かっていない、本部は現場の状況が分かっていない――というのは多くの小売り企業が抱える悩みだろう。
それをPAPABUBBLEでは「ある程度は仕方ない」と割り切らず、「見る」「目標を立てる」「追いかける」というフローを浸透させるための動きを徹底している。
「4月に就任してから、ものすごい勢いで5カ月弱、走り回ってきました」と振り返る越智氏。その手腕で、今後PAPABUBBLEのブランドはさらなる飛躍を見せるだろうか。
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