フルマラソン完走で一次面接 なぜ「走れるITエンジニア」を求めるのか?:カヤック「42.195km採用」(2/2 ページ)
昨今、ITエンジニアの求人倍率は高止まりを続け、多くの企業がIT人材の獲得に課題を持っている。そんな中、エンタメ関連事業などを手掛けるカヤック(神奈川県鎌倉市)が打ち出したのが「42.195km採用」だ。なぜITエンジニアを「走れるか」で判断するのか? 一見すると「突飛な面白企画」のようだが、その裏には優秀なエンジニアのある“習性”に関する分析があった。
求める人材をユニークな切り口で定義
かくしてマラソン完走で書類選考を免除する「42.195km採用」の企画が固まった。職務履歴書やエントリーシートだけでは分からないITエンジニアとしての成長意欲を、フルマラソン完走という記録で把握しようという趣旨だ。
選考方法は3つ用意した。「マラソン完走選考」は、フルマラソン完走経験がある人の書類選考を免除する。「練習計画選考」は、現時点ではフルマラソンを完走したことがない人でも応募しやすいよう企画したもので、タイムを縮めるために取り組んでいることを候補者から聞く。
「湘南国際マラソン選考会」は、応募した上で12月に開催される湘南国際マラソンで完走した人を対象に、その場で面接する。面接用のブースを作る予定だというが「フルマラソン後の面接はさすがに体力的に厳しいだろう」との配慮で、後日の面接も可能だ。当日はカヤックのITエンジニア社員も走る予定のため、コミュニケーションが取れればよいとの意図もある。
8月24日に募集を開始したところ、フルマラソン完走選考には3人、ランニング計画選考には3人、湘南国際マラソン選考会には10人の応募があった(28日時点)。
選考だけではなく、説明会の開催手段もユニークだ。走っている最中に聞けるよう、Podcastのコンテンツを用意した。「説明会を聞きながら『90秒+90秒のインターバル練習』ができる」など、企画に合わせたコンテンツとした。
これまでにも、履歴書の代わりにGoogleの検索結果を用いて選考する「エゴサーチ採用」や、ゲームを通じてつちかった発想力や問題解決力を評価する「いちゲー採用」など、数々の採用企画を実施してきた同社。前者はのべ2270人の応募が集まり8人を採用、後者はのべ800人の応募から9人を採用した実績がある。
また「つくったもの選考」という、これまで作ってきたものだけをエントリーシートに記入することで、エントリーできる選考フローも用意。「なるべくその人の良さや新しい書類を作らずに応募できるようなことに取り組んできた」という。
“面白法人”を名乗る同社だけあって、こうしたユニークな採用手法に面白さを感じてくれるような候補者は、社風にマッチしやすいのではとの考えがある。42.195km採用に関しては、未発表の取り組みをまだ2つほど用意しており、順次展開していく予定だ。
ITエンジニア不足がそこかしこで叫ばれる現在。自社が欲しい人材をユニークな切り口で定義し、採用プロモーションを打つというカヤックの強みを生かした採用で、成長意欲の高い優秀なランナーエンジニアは集まるだろうか。
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