ディズニーチケット「最大1万円超え」 かえって満足度が「高まりそうな」理由:廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(2/2 ページ)
新エリア「ファンタジースプリングス」が開業予定の東京ディズニーシー。チケット価格は年々上昇し、10月以降は最大1万円を超える。ライトな消費者からすると「行きづらくなる」と感じるかもしれないが、かえって顧客満足度は高くなりそうだ。
オリエンタルランドが公表している年度別の来園者数を見ると、18年に3255万8000人と過去最高を記録している。東京ディズニーランド開業から40年、同社はパークに投資をして入園者数を増やして収益を拡大し、さらに投資を進めるサイクルを繰り返してきたが、新型コロナウイルスの影響もあり、大幅に入所者数が減少した。
しかし入場者数が減少し、かえってコロナ禍での来園者の満足度が向上したことを機に、22年5月に公表した中期経営計画からは、1日当たりの入園者数の上限を抑える方針を打ち出した。人数を制限することで、来園者が自由に使える時間が増え、「体験価値」が上昇し、満足につながると考えているわけだ。
25年3月期の入園者数は「2600万人レベル」としており、10年以上前の09年ごろの水準に戻ることになる。入場者数が多ければ、1人当たりの売り上げ単価が高くなくとも問題ないかもしれないが、入場者を減らした上で売り上げを維持・成長させるには、来園者1人当たりの売り上げを増加させる必要がある。
待ち時間を減らし、少しでも多くの体験を提供できるプレミアアクセスや、今までの価格帯のさらに上を行く「グランドシャトー」での最上級の宿泊体験など、高価格化によって体験価値を上昇させるビジネスモデルが、今後のオリエンタルランドの戦略の中核になっていくだろう。
コアなファンはともかく、ライトな消費者からすると、エリアが拡張されようが、パレードが新しくなろうが、ディズニーはディズニーであり、入園料が上昇していることは「自分たちがディズニーに行きづらくなる」と感じるかもしれない。しかし、入場制限によって待ち時間が減れば、より多くのアトラクションに乗れたりするので、満足度は高くなり、結果的にリピートにつながると推量できる。何より「高くてもディズニーに行きたい、行ってみたい」という、ディズニーに対する消費者のロイヤリティーは年々強まっているように思われる。
テレビでは連日のようにディズニーを特集し、SNSではディズニーに行った投稿があふれている。ディズニーは一過性のブームとして消費されているわけではなく、ある種の“聖地”として学生にとっても、大人にとっても、ファミリー層にとっても、定期的に行きたくなる非日常を消費できる場所として定着しているのだ。ディズニーが人々にとって「行ってみたい場所」であり続ける限り、チケット価格を上昇してもさほど影響は出ないだろう。
著者紹介:廣瀬涼
1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。
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