どうなる? 500万回線突破「楽天モバイル」 明るい話題と不安要素:房野麻子の「モバイルチェック」(2/2 ページ)
自社回線(MNO)の契約数が500万を突破した楽天モバイル。直近決算では赤字幅が縮小、OpenAIとの協業を発表するなど明るい話題も出た。一方、不安要素も残っている。
楽天モバイルの損益分岐点は800万から1000万回線とされているが、最低ラインの800万回線を迎えるには1カ月10万件の回線数増加を続けても2年半かかる。その間、楽天グループには1兆円近い社債の償還が待ち構えている。
コスト削減が収益改善に貢献したとされているが、今後、プラチナバンドの700MHz帯が割り当てられた際にも、基地局の開設費用を抑えられるかは微妙だ。楽天は既存の1.7GHz帯基地局の活用とソフトウェアアップデートで、プラチナバンドは低コストで展開が可能としているが、700MHzと1.7GHzでは電波の特性が異なり、既存の基地局に取り付けるだけで済むとは考えにくい。
KDDIの800MHz帯をローミングで貸し出されているので、700MHz帯のエリア構築を急いで行う必要はないかもしれないが、ユーザーが増えてくればトラフィックが混雑してくる。そうなると、せっかく上がってきたエリアに対する評価が再び落ち、ユーザー離れにつながる恐れもある。
楽天モバイルの共同CEO、楽天シンフォニーでもCEOだったタレック・アミン氏の退任も気になる。アミン氏は楽天モバイルの「完全仮想化ネットワーク」を作り上げ、携帯電話業界では世界的によく知られた人物だ。後任としてシャラッド・スリオアストーア氏が楽天モバイルの共同CEO兼CTOに就き、実務的には問題ないと思われるが、影響力を持つ人物を手放してしまったことで、楽天モバイルのシステムを海外に販売している楽天シンフォニーの事業に影響が出てくるかもしれない。他にもキーマン数人が楽天モバイルから去っていることも気掛かりだ。
三木谷氏は「23年の収益がかなり改善しており、第4四半期にはさらに改善する」と発言している。秋から大型キャンペーン・マーケティングを展開してRakuten最強プランの認知度を向上させていくという。秋といえば、新型のiPhoneが登場する。かつて、大手3キャリアはiPhone発売に合わせて自社エリアの通信速度やキャンペーンで優遇された料金プランをアピールしていたものだった。楽天モバイルもiPhoneと改善されたエリア、自慢の料金プランを合わせて攻勢をかけてくるのかもしれない。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』で人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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