「楽天モバイル」はなぜ苦戦しているのか 背景に4つの誤算:誤算の連鎖(1/5 ページ)
2022年12月期決算で、過去最大の3728億円の赤字を計上した楽天グループ。その要因はモバイル事業「楽天モバイル」だ。なぜ苦戦を強いられているのか。筆者が考える三木谷構想4つの誤算をひも解く。
2022年12月期決算で、過去最大の3728億円の赤字を計上した楽天グループ(以下楽天)。3月30日に開かれた株主総会では、4928億円の損失を出してグループ巨額赤字の根源となっているモバイル事業について、株主から「もうやめた方がいいのではないか」との意見も出され、事業として苦境に立たされた感が強く漂っています。「第4の携帯電話キャリア」として華々しく業界参入した同社のモバイル事業が、どうしてこうも苦戦を強いられているのか。筆者が考える三木谷構想4つの誤算をひも解きます。
(関連記事:正念場迎える「楽天モバイル」 財務戦略に潜む苦難の実情)
そもそも三木谷構想では、モバイル事業そのもので大きな利益を得ようと狙っているわけではありません。楽天はECビジネスからスタートし、新規事業の立ち上げや企業買収によってその領域を広げていき、ポイント・サービスやキャッシュレス決済をキーに利用者を楽天ビジネスに囲い込む、楽天経済圏を形作っていきました。モバイル事業への進出は、それを完成させるための強力な切り札だったのです。
ですからモバイル事業は単体で黒字化さえしてくれれば、あとはポイント付与などを誘引材料としてEC、旅行、エンタメ、金融などの間を回遊させ、グループ全体で大きな収益を生むことにつなげられるのというのが三木谷構想のもくろみなのです。しかし、誤算が誤算を生み、肝心のモバイル事業の黒字化がはるかに遠いというのが現状なのです。
基地局整備に苦戦 いきなり開業延期
まず1つ目の誤算は、基地局整備です。17年12月のキャリア事業への新規参入を表明して以来、19年秋の開始を予定していた楽天のモバイル事業は、半年の開業延期という大きな躓(つまづ)きからスタートしました。これは、基地局整備の不調が原因でした。
楽天は、独自の基地局クラウド化技術を全面に押し出していたことから、この課題を軽く考え過ぎていた節があり、事業参入を目前にした19年9月の時点で整備が計画通りにはかどらず、監督官庁の総務省は安定的なサービス提供に問題ありと判断して、待ったをかけたのです。
結果的に開業は半年先延ばしとなり、20年4月にキャリアとしての事業を開始しました。イメージの面からあまりにも痛すぎるスタートとなりました。
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