「楽天モバイル」はなぜ苦戦しているのか 背景に4つの誤算:誤算の連鎖(2/5 ページ)
2022年12月期決算で、過去最大の3728億円の赤字を計上した楽天グループ。その要因はモバイル事業「楽天モバイル」だ。なぜ苦戦を強いられているのか。筆者が考える三木谷構想4つの誤算をひも解く。
見通しの甘さが浮き彫りに 基地局6万局に総額1兆円
この問題における見通しの甘さは、その後も続発しています。当初4万7000局6000億円の投資で基地局整備を完成させるとしていた計画は、それでは携帯キャリアとして十分な通信網を提供するに至らないとの判断から早々に見直しとなっています。
計画は6万局へと変更され、現時点で基地局数は5万2000局。投じられる資金は22年度だけで約3000億円、23年度も同規模が予定される計画で、6万局達成に向けて総額1兆円をはるかに超す投資になる見通しに変更となっています。
基地局6万局計画は24年度中での達成見通しを公表していますが、果たして思惑通りに運ぶのか否か、資金調達に苦心する現状ではこれも不透明です。現在98.2%と公表された同社の携帯電波の人口カバー率は、6万局達成で「99%を達成できる」としています。これに対し、大手携帯キャリア幹部からは「98%から99%への1%が地獄の苦しみ」との話も出ており、ここでもまた見通しの甘さが露呈することは十分に考えられるでしょう。
ライバルは、NTTドコモの国内基地局数が約26万局(4G)、auは約20万局、ソフトバンクでも約17万局を備えています。ソフトバンクですらいまだに「上位2社に比べてつながりが悪い」と言われていることを考えれば、今後3社にごして戦っていく上で6万局ではおよそ足りていないのは明白であり「基地局投資が24年度で一段落する」などという見通しこそが誤算の上塗りになる可能性が高いのです。
同社の基地局整備を巡っては、元部長の佐藤友紀氏が、日本ロジステック(東京都千代田区)の元常務・三橋一成氏と、物流会社TRAIL(東京都港区)の元社長・浜中治氏と共謀し、整備費用を水増ししていたとして詐欺容疑で逮捕されるという事件も発生しています。
各社の報道では、佐藤容疑者が委託先の日本ロジスティクスなどに建築資材の保管費用を水増し請求する手口で、19年から21年までの3年間で楽天モバイル側から総額300億円を詐取した疑いが出ています。
この事件では楽天は被害者であり、特にコメントも出していませんが、基地局整備の遅れが指摘されていた時期の元社員による犯行だっただけに、さらにネガティブなイメージが付くことになってしまいました。
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