『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』編集者が明かす 「現場を知らない上司」に企画を通す方法:新進気鋭クリエイターの鼎談(1/3 ページ)
日本の最前線を行くヒットメーカーたちにも、一会社員として上司との付き合いに悩める日々もあるようだ。ヒット作の生み出し方から上司の説得の仕方まで、一流の仕事人の方法論に迫る。
多くの組織人が壁にぶち当たること――。それは立ち上げた企画を稟議によって通すことではないだろうか。市場調査をして競合と差別化を図り、今の時代に合った提案をしても「予算がない」と一蹴されたり、企画内容のよしあし以前に年代のギャップによって齟齬(そご)が生まれたり……。結果的に「お蔵入り」して実現せずに終わる。そんな話は枚挙にいとまがない。
悩めるビジネスパーソンにアドバイスをするのが、『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』などメガヒットを飛ばし続ける漫画編集者・林士平氏だ。
PR TIMES(東京都港区)とCINRA, Inc.(東京都千代田区)が手掛けたイベント「MEDIA DAY TOKYO2023」のセッション「クリエイターエコノミー時代に、メディアが持つべき視点。これからのメディアをテレビ・漫画・音声コンテンツのトップランナーが語る」でスピーカーとして、同じくヒットメーカーであるニッポン放送プロデューサー・ディレクターの石井玄氏、関西テレビ放送プロデューサーの佐野亜裕美氏と登壇した。
日本の最前線を行くヒットメーカーたちにも、一会社員として上司との付き合いに悩める日々もあるようだ。ヒット作の生み出し方から上司の説得の仕方まで、ヒントとして役立ててもらいたい。モデレーターはメディア「CINRA」編集長・生田綾氏が務めた。
林士平(りん・しへい)。漫画編集者。2006年に集英社に入社。『月刊少年ジャンプ』、月刊少年漫画誌『ジャンプSQ』の編集部を経て、現在は『少年ジャンプ+』編集部員。連載中の担当作品は『少年ジャンプ+』にて『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『HEART GEAR』『幼稚園WARS』『ダンダダン』『BEAT&MOTION』
石井 玄(いしい・ひかる)。ニッポン放送プロデューサー・ディレクター。2011年、ニッポン放送系列のラジオ制作会社サウンドマン入社(現ミックスゾーン)。2020年にニッポン放送入社。エンターテインメント開発部のプロデューサーとして、「星野源のオールナイトニッポン リスナー大感謝パーティ―」「佐久間宣行のオールナイトニッポン0 リスナー大感謝祭〜freedom fanfare〜」などのイベントに携わる傍ら、Amazonオーディブルのポッドキャスト「佐藤と若林の3600」「オークラ 質問のコメディ」などのプロデュースを担当
佐野亜裕美(さの・あゆみ)。関西テレビ放送株式会社プロデューサー。2006年にTBSテレビ入社。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9〜刑事専門弁護士〜』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュース。2020年6月にカンテレ(関西テレビ放送)へ移籍し、『大豆田とわ子と三人の元夫』やNHKで『17才の帝国』、『エルピス-希望、あるいは災い-』をプロデュースする
『チェンソーマン』 いかにして生み出したのか?
――早速ヒットコンテンツの生み出し方、心をつかむコンテンツについてお話していきたいのですが、佐野さんは企画に6年をかけ、冤罪をテーマとしたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』を作るために、TBSテレビを退社されたと聞きました。
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