スキルは4年で「陳腐化」する 学び続けなければ失業する時代、どう生き残る?:AI時代を生き抜くということ(1/2 ページ)
「大学で4年間教育を受けて40年働く。そして60歳で引退」のモデルは崩壊し始めている。どの国の政府も「定年後も、いかに働き続けてもらうか」を議論しています。それは日本も同様だ。リスキリングが必須の時代になった今、必要な心構えとは。
この記事は、石角友愛氏の著書『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP、2023年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
「人生100年時代」について書かれた、2016年発行のベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)の著者リンダ・グラットン氏は、22年に出版した『リデザイン・ワーク 新しい働き方』(同)で、これからの私たちに必要な新しい人生設計について書いています。
グラットン氏は、これからの私たちの人生は「教育→仕事→引退の3ステージの人生から、マルチステージの人生になる」といいます。言い換えると、「『4 to 40』のキャリアの時代が終わり、『4 to 4』のキャリア時代に突入する」ともいえます。
「4 to 40」のキャリアとは、高度経済成長以降、長く続いてきた「大学で4年間教育を受けて40年働く。そして60歳で引退」のモデルです。少子化で財源の確保が難しくなっているほとんどの先進国では、そもそも60歳で引退という人生プラン自体が破綻し始めています。どの国の政府も「定年後も、いかに働き続けてもらうか」を議論しています。それは日本も同様です。
身に着けたスキルの「賞味期限」は5年以下に短縮する
一方の「4 to 4」のキャリアとは、「4年間学んだ知識で4年働く」といったモデルです。学び直しをしてスキルアップし、また働く。
23年9〜10月号のハーバード・ビジネス・レビューでは、偶然にも「Reskilling in the age of AI(AI時代のリスキリング)」という記事が特集されていました。そこには「スキルの平均的な半減期は今や5年以下であり、一部の技術分野では2年半にまで短縮されている」と書かれていました。
日本でも40代、50代になって大学や大学院で学ぶ人が増えてきましたが、米国ではこれらが当たり前になってきています。とくにオンラインの大学院では、年齢に関係なく幅広い人たちが学んでいます。この「学び直し」は、学校に通ってMBAを取るといったものだけではありません。サバティカル休暇で旅に出て知見を広めたり、副業をして新しいスキルを身に付けたりする人もいます。実に幅広い視野で取り組まれています。
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