小売業は「2050年問題」にどう立ち向かうべきか 王者ウォルマートの戦略から読み解く:「モノを売る」だけの時代は終わった(3/3 ページ)
既に人口減や高齢化といった言葉を耳にすることが多い日本。これからさらに事態が深刻化していくことは明白だ。特に小売業では、これまで店舗網の拡大を成長のドライバーとしてきたが、もはや従来の手法では頭打ちを迎える。では、どうするべきなのか。
unerry(ウネリー、東京都港区)という会社をご存じでしょうか。22年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場した企業です。リアルとデジタルを融合させた「データエコシステムカンパニー」として、大きなポテンシャルを秘めています。各所に設置されているビーコンから発せられる電波をアプリで精度高く捕捉可能な、大規模ビーコンネットワークに関する特許を持ち、既に120を超えるアプリと連携。国内1.5億ID、グローバル2.4億ID(合計3.9億ID)を取得しています。
具体的には、携帯端末がどのような移動経路を辿っているかなどのリアルな行動分析と、オンライン上でユーザーがどのようなアクセス傾向にあるか。さらに、小売業のPOSデータと連携することで、行動と購買をつなげるソリューションを提供しています。つまり、さまざまな産業がビジネス成果を向上させる上で、必須ともいえるデータ基盤なのです。
人流ビッグデータのエコシステムがもたらす効果は、個社のビジネス改善にとどまりません。いわゆる「GAFA」と呼ばれるグローバルIT企業は、各社が提供するサービスの範囲で拡大していくことを基本にしています。例えば、基本的にアップルとグーグルは連携せず、あくまで競合の位置付けです。一方、unerryのソリューションはあらゆるサービスを横断的に制限なく増幅していける点に強みを有します。
アプリデータや各企業のPOSデータと連携すれば、でき上がるのは膨大かつ独自性の高いデータ基盤です。活用先は小売業から不動産業、さらにはスマートシティなどの街作りへも広がります。もちろん国内にとどまらず、グローバル市場でも同じことがいえるでしょう。なぜなら、人口が増加していく各国ではオフラインのデータが爆発的に増えていくからです。
小売業は「モノを売る」だけでは生きていけない
いくらECの利用が増えてオンラインが活性化しても、日本の店舗における購買はまだ全体の8割以上を占めています。そうしたオフラインのデータを可視化しやすいポジションにいるのは、unerryのようなベンチャー企業だけではありません。顧客接点量が圧倒的に多い小売業も有利な位置にいるのです。小売業はモノを売るだけでなく、ITサービスを生み出すチャンスがあり、さらに求められる時代に突入しています。世界トップのウォルマートでは、まさにそのような取り組みを13年から続けているのです。
冒頭のグラフで整理したように、日本はシュリンクしやすい市場環境にあります。その中で飛躍的に業績を伸ばすには、既存事業対策だけでは足りないこともあるでしょう。そこで国内の新規事業とグローバル市場への展開がキーといえるタイミングであることから、今回の記事とさせていただきました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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