しまむら決算好調 ユニクロと決定的に異なる独自のビジネスモデル(2/2 ページ)
しまむらの連結売上高と各利益高は、上期として過去最高を更新した。しまむらが消費者からの支持を集める要因を考えると、ユニクロと決定的に異なる独自のビジネスモデルが見えてくる。
節約志向が高まる中でも、高価格帯PBが好調
しまむらの23年上期の客単価は前年同期比105.3%と好調に推移した。客単価増の背景には、プライベートブランド(以下、PB)「CLOSSHI」(クロッシー)の高価格帯ブランド「CLOSSHI PREMIUM」が好調だったことがある。
CLOSSHI PREMIUMでは夏に向けた商品を拡充しており、吸湿冷感機能を追加した「素肌すずやかパンツ」(2970円)や特殊な冷感素材を使用した「超COOL ひんやりアームカバー」(759円)などを販売。今夏は猛暑日が続いたこともあり好調に売り上げを伸ばし、CLOSSHI PREMIUMの売上高は前年同期比で37.3%増加したという。
「しまむらは今まで、PB1.0と呼ばれる価格訴求型の商品が品ぞろえの中心でした。しかし、PB2.0と呼ばれる、安いだけではない、本当に付加価値がついた商品を、CLOSSHI PREMIUMを中心に強化し、品ぞろえの幅を広げたことも売り上げアップに貢献したと考えられます」
9月は猛暑が長引いたこともあり、既存店売上高は0.4%減という結果に。同社は「9月は全国的に猛烈な残暑が続いたことで夏物の売り上げを伸ばした一方で、長袖のTシャツやブラウス、ニットなどのアウター衣料や寝具・インテリアの秋冬物は、高気温の影響で動き出しが鈍かった」とコメントしている。
「『地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した』と国連のグテーレス事務総長が警告したように、ここ数年、9月に30度を超すことが日本でも当たり前になっています。来年以降は、9月スタートの秋冬物の品ぞろえの幅や展開スタート時期などを再度見直す必要があるのかもしれません」
「アパレル業界の今後を語るうえでチャイナリスクへの対応は外せません。アパレルの生産地は、ベトナムやバングラデシュなどさまざまな国に広がってはいるものの、まだまだ中国依存が強いのが現状です。地政学リスクを踏まえると、チャイナプラスワンを加速させ、リスクヘッジをしていくことが今後ますます重要になっていくでしょう」
話を聞いた人:渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト。流通ジャーナリスト。コンビニ評論家。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は講演会業務を中心に、商品開発・営業・マーケティング顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『Live News α』レギュラーコメンテーター、TOKYO FM『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。
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