スシロー「デジタル回転寿司」の衝撃 くら寿司との都心決戦を左右する「レーン戦略」:回転寿司は「回らない」がスタンダードに?(1/3 ページ)
スシローとくら寿司、しのぎを削る回転寿司の両チェーンで「レーン」の向き合い方に違いが出ている。前者はデジタルを駆使し、後者は従来の回転レーンを維持しながら商品を提供するスタイルだ。どうしてこのような違いが生まれているのか。
回転寿司大手のスシローが、1月に起きた迷惑事件以降、寿司をレーンで“回す”ことを中止している。もともと夏に復活させる予定だったというが、9月末時点でまだ復活していない。さらに、最近は大型モニターで回転レーンを再現する「デジロー」を試験導入した。回転レーンを流れる寿司を眺めるのは、回転寿司における醍醐味といえる。中止を続け、さらに大きな方向転換となったデジローを見るに、事件の影響は大きかったのだろう。
一方、商品を従来の回転レーンで提供し続けているのが、くら寿司だ。競合との差別化の一環として、今後も継続する方針を掲げている。
スシローとくら寿司は、両社ともロードサイドの大型店を基本としているが、なぜ異なる方針をとっているのだろうか。メニュー構成やビジネスモデルの違いを比較すると、レーンで異なる方針をとる理由が見えてくる。
迷惑動画の余波でレーンを止めたスシロー、回し続けたくら
1月に起きた迷惑動画の拡散事件を、いまだに鮮烈に覚えている読者も多いだろう。金髪の高校生がスシローの店内でしょうゆ差しを舐めたり、レーン上の寿司に唾液をつけたりする動画がSNS上で拡散されたのである。この事件はスシローに大きなショックを与えた。動画の拡散直後はスシローの一部店舗で客足が遠のき、運営元のあきんどスシローを傘下に持つFOOD & LIFE COMPANIESの株価が急落するなどの影響もあった。
スシローは2月以降、回転レーンで注文品以外を提供するのを取りやめ、9月末時点でも中止している。好調だった2022年9月期に対して、23年9月期は既存店客数・売上高が減少。一連の事件が業績悪化の原因であるとして、あきんどスシローは件の少年に約6700万円の損害賠償請求を行った(その後、調停が成立して訴えを取り下げ)。
迷惑事件はスシローだけでなく業界全体に影響を与えた。注文品以外でレーンに流す商品を大幅に減らしたチェーン店もある他、レーン自体を廃止するチェーン店もあった。一方、くら寿司は回転レーンを従来通りに継続する方針を掲げ、迷惑行為に対しては全店舗に配置した「新AIカメラシステム」で対処するとしている。
従来のようなレーンの運用を中止したスシローと継続するくら寿司。両社が異なる方針を立てた理由は、それぞれの特徴を比較すると分かりやすい。
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