激変する大阪の街並み まだ見ぬ“集客ポテンシャル”とは?:後編(3/3 ページ)
大阪府と大阪市が官民一体で進めている都市再生事業「大阪7大再生プロジェクト」。記事後編では、都心から少し離れた副都心や都心の辺縁部にあたる「天王寺・阿倍野」「大阪城公園(OBP)」「臨海部」に焦点を当ててみたい。各エリアの特徴を探り、点でつないでいくと、大阪府市が描く街づくりの戦略や意図が浮かび上がる。
USJ、海遊館、万博……臨海エリアのこれから
臨海部にある埋立地「夢洲」(ゆめしま)では大阪・関西万博の開催に向けた工事が進行中だ。2030年代前半には統合型リゾート(IR)も完成する予定で、夢洲内には大阪メトロ中央線などの鉄道路線が乗り入れる計画となっている。大阪府の試算によると、このIRによる経済波及効果は年間1兆円以上とされ、今年(23年)9月28日には府と米国のIR事業者「MGMリゾーツ・インターナショナル」との間で正式に実施協定が締結された。
また、夢洲以外でも、夢洲の玄関口にあたり、かつて大阪五輪の会場候補地でもあった埋立地「舞洲」(まいしま)、USJ近くの「此花西部臨港緑地エリア」などでも新たな開発計画が持ち上がっている。
万博会場となる夢洲(写真中央)と舞洲(いずれも此花区)。現在はコンテナターミナル等があるが、開発は道半ば。その南側(写真下側)には府外各地に向かう航路が発着するフェリーターミナルも見える(こちらは住之江区)。夢洲とはトンネルで結ばれる(19年撮影)
大阪市の臨海部には「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」や水族館「海遊館」など人気のアミューズメント・リゾート施設に加え、府外各地へと向かう客船・フェリーターミナルやコンテナターミナル、物流基地などさまざまな港湾機能が備わっている。
大阪市は臨海部のさらなるにぎわい創出を目指し、こうした臨海部の開発に合わせるかたちで大型クルーズ客船やコンテナ貨物船の誘致を進めるとしている。
開発が進む7エリアの共通項とは?
ここまで2回に分けて大阪府と大阪市が市内7エリアで推し進めている都市再生事業「大阪7大再生プロジェクト」の現状を紹介した。
これらの再生プロジェクトは一見それぞれ関係性が薄いものも多いように思えるが、7エリアのうち「大阪駅周辺」「中之島」「御堂筋」「難波」「天王寺阿倍野」の5エリアは大阪市における南北の交通基幹軸「大阪メトロ御堂筋線」の沿線にあたる。
そして「大阪城」「臨海部」「御堂筋」の3エリアは万博会場・夢洲にもつながる東西の交通基幹軸「大阪メトロ中央線」の沿線。さらに、これら7エリア全てが大阪市内と郊外・市外とをつなぐ「交通結節点」(乗り換えターミナル)を持つという共通の特徴がある。
大阪府としては「大阪7大再生プロジェクト」において市内の南北・東西における交通基幹軸を明確化し、その基幹軸における交通結節点への開発を呼び込むことで、さらに府内全体の活性化につなげていきたいという思惑もあろう。
実際、大阪市の周辺都市では千里ニュータウン(吹田市)や茨木市、門真市、箕面市、枚方市などで大型再開発計画が進んでいるが、こうした郊外の再開発地域のほとんどは「再生プロジェクト」が行われているエリア内まで、乗り換えなしでアクセスすることが可能だ。
開発たけなわである大阪の街は、プロ野球、阪神タイガースとオリックス・バファローズの優勝セールでさらに活気づく。大阪の街並みはこれからどう変容していくのか、今後も目が離せない。
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