「初任給50万円」のウラ側 みなし残業代を引いたらいくらになるのか?:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
高額な初任給を提示する企業が増えている。意欲と能力のある若手に高額な給与を支払うこと自体には賛成だが、一方で固定残業代や深夜割増賃金まで含んだ「カサ上げ」と言える事例も散見される。高額初任給の実態とその裏側とは――?
Webメディアや人材サービス事業を展開するレバレジーズは9月、2025年卒の新卒採用より、初任給を35万円に引き上げると発表した。これまでの初任給額は28万円で、一挙に25%、7万円ものアップとなる。固定賞与と業績連動賞与を合わせた初年度年収は500万円を超える水準になるという(リリース)。
深刻な人手不足を背景に、多くの企業で賃上げの動きが出ている。2023年の春闘では満額回答も続出し、異例の賃上げを実施する企業が相次いだ。
連合が発表した「2023春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」によると、正社員の平均賃上げ率は3.58%に達し、1994年以来初の3%台を更新している。
賃上げの動きは、23年度の新卒初任給にも影響を与えた。労務行政研究所「2023年度 新入社員の初任給調査」によると、東証プライム上場企業1784社のうち回答があった157社の中で、初任給を「全学歴引き上げた」と回答した企業は70.7%。前年度比28.9ポイント増、過去10年間で最大だった。
メガベンチャーで相次ぐ高額初任給 新卒で30〜50万円台も続々
実際「メガベンチャー」と称されるIT系の上場大手企業を中心に、昨年来より初任給を引き上げる動きが活発だ。
例えばメディアやインターネット広告、ゲーム事業を展開するサイバーエージェントは、2023年度の新卒入社より初任給を42万円に引き上げると発表。同社の初任給はもともと34万円(年俸12分割計算)と他社比でも高額であったが、そこから一律で月額8万円(23.5%)引き上げると同時に、エンジニア職でも37万5000円だった下限を同様に42万円に引き上げ、職種にかかわらない厚待遇を実現した。
同じくインターネット事業や金融事業などを幅広く手掛けるGMOインターネットグループも、23年度の新卒採用より「No.1&STEAM人財採用〜新卒年収710万プログラム」および「No.1&STEAM人財採用〜地域No.1採用」と銘打ったプログラムを実施。いずれも高度な専門技術、知識、能力を持ち、将来的にグループ経営を担う人物をターゲットにしたもので、前者は東京本社で採用した人材に2年間、年収710万円を確約。月給額はなんと59万1675円を提示している。「地域No.1採用」は主に九州地区でのエンジニアやクリエイター職の採用に対する施策で、東京採用の710万円には及ばないものの、各地域で最高レベルの賃金となる月給額32万8344円を提示している。実際、ターゲットに即した優秀人材の採用にも成功しているという。
参考までに「令和4年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によると、わが国の一般的な大卒者の平均初任給額(残業代・賞与別)は22万8500円。
バブル経済が崩壊した1992年頃から30年間にわたってほぼ変化しない初任給水準が当たり前のようになっているご時勢に、一部のメガベンチャー企業が提示する高額初任給は明らかに目立つ存在だ。2024年新卒採用における各社の初任給額は次の通りである。
- 楽天:30万円
- レバレジーズ:35万円
- セプテーニ:36万5000円
- DeNA:38万7500円
- サイバーエージェント:42万円
- GMOインターネットグループ:59万1675円(新卒年収710万プログラムの場合)
企業の競争力を左右する優秀な若手人材は各社とも獲得競争の様相を呈している中、平均の1.5倍から2.6倍近い額面となる思い切った初任給額設定はまさにターゲットとなる層を引きつけ、新卒採用マーケットにおいて明らかに優位に立てることは間違いないだろう。
筆者個人としては、意欲も能力もある若手にきちんとお金で報いる会社が増えること自体は大賛成であるから、ぜひ各社ともどんどん報酬額を競り上げていっていただきたいところだ。
しかし、決して額面金額だけに踊らされないでいただきたい。一見、月額給与が高額に見えても、よくよく見れば「固定残業代」や「深夜割増賃金」、場合によっては「賞与」まで含んだ「カサ上げ」、もしくは「水増し」の結果かもしれないからである。
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