「初任給50万円」のウラ側 みなし残業代を引いたらいくらになるのか?:働き方の「今」を知る(4/5 ページ)
高額な初任給を提示する企業が増えている。意欲と能力のある若手に高額な給与を支払うこと自体には賛成だが、一方で固定残業代や深夜割増賃金まで含んだ「カサ上げ」と言える事例も散見される。高額初任給の実態とその裏側とは――?
(1)求人票において、基本給と固定残業代を区別して表示しているか?
固定残業代は、基本給や諸手当など他の賃金とは明確に区別して、具体的に表示しなければならない。
×「月額25万円(固定残業代含む)」
○「月額25万円(20時間分の固定残業代3万円を含む)」
基本給金額は、残業代やボーナスの算定基準となる。あえて固定残業代部分を高く設定し、意図的に基本給を下げることで、残業代やボーナスの負担を軽くしようと目論む意地汚い会社もある。後々の金銭トラブルの原因ともなってしまうため、この点をあいまいにしている会社にはくれぐれもご用心いただきたい。
(2)残業実態を把握し、固定残業時間を超過した分の残業代はきちんと支払っているか?
「あらかじめ固定残業代を支払っているため、いくら残業させても残業代はチャラ」だと勘違いしている人は意外と多い。しかしこれは明確な誤りだ。決められた固定残業時間を超えて残業をした場合は、当然ながらその分の残業代を追加で支払わなくてはならない。当然ながら会社側は、残業時間も固定残業制の有無にかかわらず、キッチリ管理し把握しておく必要がある。
たとえ特別条項付きの36協定を結んだとしても、労働時間管理を怠り「総残業時間は年720時間まで」「月45時間以上の残業は年6回まで」「残業時間は単月100時間まで」といった規定を超過してしまった場合は、罰則として「半年以内の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科せられることになる。
(3)設定した固定残業時間未満の労働でも、固定残業代を支払っているか?
さすがにここまでの誤解はないと思われるかもしれないが、まれに「固定残業として決められた20時間分の残業をしていないから、固定残業代は払わない」とする会社がある。当然、制度の主旨として明らかに間違いだ。固定残業代は残業しようがするまいが、毎月定額で支払われる制度である。たとえ残業を一切せずに定時で帰ったとしても、決められた固定残業代が支払われなくてはならない。
求人票や募集要項を見る際や、会社説明会などで疑問を抱いた際には、ぜひこれらの点を確認して疑念を払拭していただきたい。
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