「ウチは関係ない」で済まされない 人的資本経営の本質とポイント:上場企業以外も取り組むべきテーマ(2/3 ページ)
何かと耳にすることも増えた「人的資本経営」。情報開示義務があるのは現在上場企業のみだが、だからといって非上場の企業は取り組まないで良いわけでは全くない。取り組みのポイントや参考になる事例を紹介する。
きっかけの一つは、経済産業省が2020年1月から開催した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」です。同年9月に発表した報告書、通称「人材版伊藤レポート」は話題になりました。さらに22年5月には、人的資本経営の重要性や実践に向けた取り組みなどをまとめた「人材版伊藤レポート2.0」も発表しています。
国外に目を向けると、18年12月に国際標準化機構が発表した「ISO30414」が人的資本に関する情報開示のガイドラインとして知られます。また、米国では20年に米国証券取引委員会が人的資本に関する情報の開示をルール化しました。
さらに、IFRS財団により設立された国際サステナビリティ基準審議委員会が、24年以降に取り組む可能性があるテーマの候補として人的資本を掲げています。このように、国内だけでなくグローバルでも、人的資本経営は決して外すことのできないテーマとなっています。
求められる「3つの視点」と「5つの要素」
20年9月の人材版伊藤レポートでは、人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素を整理しています。
◎3つの視点
(1)経営戦略と人材戦略の連動
(2)As Is-To beギャップの定量把握
(3)企業文化への定着
◎5つの共通要素
(1)動的な人材ポートフォリオ
(2)知・経験のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)
(3)リスキル・学び直し(デジタル・創造性など)
(4)従業員エンゲージメント
(5)時間や場所にとらわれない働き方
実際にこれらの視点・要素に沿って多くの企業が取り組みを加速させています。人的資本経営コンソーシアムがまとめている事例から、参考になりそうなものをいくつか紹介しましょう。
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