RIZINがアゼルバイジャンで開催 榊原CEOに聞く「海外進出の意味」
11月4日、格闘技イベント「RIZIN」が誕生から8年目にして初めて“海外進出”する。アゼルバイジャン・バクーで「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」を開催するビジネス的な狙いを、榊原信行CEOに聞いた。
格闘技イベント「RIZIN」が、誕生から8年目にして初めて“海外進出”する。
同イベントを主催するドリームファクトリーワールドワイド(東京都港区)は11月4日、アゼルバイジャン・バクーのナショナルジムナスティックアリーナで「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」を開催する。この模様はABEMA、U-NEXT、スカパー!、RIZIN 100 CLUB、RIZIN LIVEといった各プラットフォームが生中継する予定だ。
今回はフェザー級タイトルマッチの「ヴガール・ケラモフ vs. 鈴木千裕」が目玉となる。RIZINのフェザー級では、朝倉未来がケラモフに敗れたり、元王者クレベル・コイケが金原正徳に敗れたりといった予想するのが難しい展開が続いた。まさに「混沌とした状態」といえる。そんな中、今大会では母国アゼルバイジャンのケラモフが、自国民の前でタイトル初防衛に臨む。
大会は在アゼルバイジャン日本国大使館の後援のもと、RIZIN初の海外大会となる。RIZINが海外に進出する狙いは何なのか。同社の榊原信行CEO(榊は正確にはきへんに神)に聞いた。
榊原信行(さかきばら のぶゆき) RIZIN FIGHTING FEDERATION CEO、株式会社ドリームファクトリーワールドワイド代表取締役社長。大学卒業後、東海テレビ事業株式会社に入社。「K-1 LEGEND 〜乱〜」や「UWFインターナショナル名古屋大会」などのイベントをプロデュースする。1997年には「PRIDE.1」を開催し、成功に導く。2003年にはPRIDEを運営するDSEの代表取締役に就任。07年に売却するまで、「PRIDE」の躍進に大きく貢献する。08年には「FC琉球」のオーナーとなり自ら経営に携わり、09〜13年にかけてはJFL(日本フットボールリーグ)の理事にも就任。15年に自ら実行委員長として「RIZIN FIGHTING FEDERATION」を立ち上げる(写真は2022年12月撮影:鳥井大吾)
外貨をいかにして獲得するか
――今大会はアゼルバイジャンで開催します。海外で興行をするビジネス的な狙いは?
これだけ円安が進むと、海外から選手を招へいするのにも、今までの何割増しかでお金がかかる状況です。ファイトマネーだけを考えても、(海外の選手に払う場合は)単純に1年半前と比べると数十パーセントほど高くなってしまいますね。
一方この状況は裏を返せば、例えば海外では今まで1万ドルしか稼げなかったものが、もっと稼げる状況になったということでもありますね。つまり外貨をいかにして稼ぐかが、格闘技だけでなく日本のコンテンツ産業にとって重要になってきたというわけです。
――なるほど。見方によっては外貨を稼ぐための好機ともいえるわけですね。海外で勝負するとなると、日本の強みは何なのでしょうか?
ITや自動車など日本にも強い産業はたくさんありますね。ではエンターテインメントはどうか。今は韓国がエンタメ産業をリードしていて、日本はやや後塵を拝している状況でもあるのかもしれませんが、僕らは積極的に「日本発で世界に通用するコンテンツ」を生み出していきたいと考えています。従ってこれからは、どんどん外貨獲得を見越したコンテンツ作りをしていきたいと思っています。
――アゼルバイジャンは経済的にも発展している国ですが、どんな印象ですか?
アゼルバイジャンという国は、2007〜08年くらいからカスピ海沖の石油ガス開発で急成長を遂げました。天然資源が豊富で「富める国」なのです。それでいて親日国です。
同国は国を挙げて国際的なスポーツイベントを開催し、世界的なプレゼンスを高めようとしています。こうした背景もあって、最近ではF1も開催していますね。
格闘技に関してもレスリングなどが盛んで、この素地を生かして世界的なスポーツを誘致したいという話が2年ほど前からありました。ようやくそれが実現する形です。
――今回の興行は今後のビジネスモデルにも影響を与えますか?
与えますね。日本国内だけで全ての売り上げをあげようとするのではなく、海外で大会を開催し外貨を獲得する方法もあるということです。この基盤ができれば、ペイ・パー・ビュー(PPV、有料コンテンツに料金を支払って視聴するシステム)や事業協賛など日本のマーケットでも、新たな売り上げが見込めます。
特にアゼルバイジャンに興味を持って進出している商社、旅行会社、天然資源関係の会社はたくさんあります。今回は在アゼルバイジャン日本国大使館も全面的にバックアップをしてくれました。そういう意味では、経済的にも新しいチャレンジにはなるかと思っています。そして他の業界にとっても何かのヒントになってくれたらいいなと思っています。
――アゼルバイジャンに続いて海外での大会開催を目指していますか?
RIZINも8年目に入りました。(ボクシング界の「生ける伝説」)フロイド・メイウェザーといろいろな取り組みをしたり、北米の格闘技団体「Bellator(ベラトール)」と共同でコンテンツを作ったり、海外選手が活躍したりといったように、さまざまな活動をしてきました。この間、RIZINとしてのプレゼンスも徐々に高めてこられたと考えています。
海外でやるからには、単にスタンプラリー的に大会を開催しても意味がないと思っています。あくまでもきちんと地域に根差し、その地域に熱を作り出せるような環境を整えつつ、いろいろな国に出ていけたらいいなと考えています。
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