「ゆで太郎」の“弟分”「もつ次郎」が、急成長しているワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
立ち食いそばチェーン「江戸切りそば ゆで太郎」の弟的存在の「もつ次郎」が急成長している。店舗が増えているのは併設店が多いからだが、シナジー効果を発揮していて……。
外食が陥りやすい「拡大路線のワナ」を回避
これまで「ゆで太郎」が培ってきたインフラにそのまま便乗する形なので、初期投資は少なくて済む。もちろん、1つの店舗・厨房で2つの業態をまわすわけだから当然、従業員も増やさなくてはいけないし、新たな調理方法などの教育・研修は必要だが、新規出店よりカネもヒトもかなり少なくて済む。
つまり、「もつ次郎」は、外食が陥りやすい「拡大路線のワナ」を回避しながら、ちょい呑み需要を取り込み、従業員のモチベーションまで上げてしまおうという極めて効率的なブランド展開なのだ。これは店舗の数を増やすのではなく、「店舗当たりの稼ぐ力」を向上させていく、という人口減少ニッポンにマッチした理想的な外食の戦い方だ。
ただ、筆者は「もつ次郎」のポテンシャルはこれだけではないと考えている。それが、(3)の「外国人観光客に『日本の伝統的ソウルフード』を訴求できる」だ。
実は今、「もつ次郎」の店内にはあるポスターが貼られている。そこにはもつ煮を白飯にかけている写真とともに「ごはんにぶっかけちゃって!」という文字がでかでかと記され、こんな説明がある。
「本場上州のもつ煮定食は最後にもつ煮の煮汁をごはんにかけて食します。最後までもつ煮定食をお楽しみください」
筆者もこのポスターに言われるまま、もつ煮定食やもつ炒め定食を頼むと、必ずご飯の上にぶっかけて食べている。まわりを見ると、そういう客も少なくない。つまり、「もつ煮丼」にしているのだ。
今のまま順調に「もつ次郎」が増えていく中で、この「もつ煮丼」は近い将来、看板メニューになっていく可能性が高い。ご存じの方も多いだろうが、実は「もつ煮丼」は全国各地で楽しまれている。群馬などの北関東はもちろん、関西や九州などでも「もつ煮丼」が名物という有名店があるのだ。
「もつ次郎」にリピーターがついて、さらなる成長を目指していこうと考えたとき、全国で実績のあるこの「もつ煮丼」を利用しない手はない。では、どうやって「もつ煮丼」という新しいジャンルを「牛丼」のように幅広く訴求していくか。
そこで考えられるのが「日本の伝統的なソウルフード」である。
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