著名人を起用するより安く済んだ? 伊藤園のCMに登場したAIタレント その舞台裏:SNSで反響(2/3 ページ)
伊藤園のテレビCMに登場したAIタレントが「本物の人間みたいだ」と話題になった。著名なタレントなどを起用する場合と比べて、製作コストは安く済んだのだろうか? その舞台裏を取材した。
なぜ男性でなく女性だったのか
新商品は9月4日にリニューアル発売し、2日後の6日からテレビCMの放送を開始した。上條氏はリニューアルのポイントとして「味を第一にこだわっている。かなりおいしくしている」と説明する。
商品の見た目を変えることで、リニューアル感を訴えることも重視。パッケージのデザイン制作にもAIを活用し、緑茶の生命力を表現した。AIは多数の案を出すといった役割が中心で、最終的にはデザイナーが調整したという。
新商品のコンセプトは、明るく健康的な未来を過ごすために今から飲み始めてもらいたいというものだ。そのコンセプトを15秒という枠の中でどう伝えていくか、広告代理店や製作スタッフなどと議論してきた。
「お〜いお茶 カテキン緑茶」を主に購入していたのは50〜60代の女性。一方、30〜40代になると人間ドックに通い始める人が増えるので、自分の健康状態を意識するようになる。こうした層に向け、商品を訴求したいと考えた。特に重視したのは30〜40代の男性だ。
30年後でも素敵な「未来の自分」と「今の自分」をどう表現するか。さまざまな手法を検討する中で、30年後の自分をよりリアルに表現するなら、AIが最適だろうという流れになった。
AIタレントのコンセプトは健康的、活動的、進歩性(未来感)だという。当初、男性とする案もあったが、最終的にはショートカットが印象的な女性に落ち着いた。
理由はいくつかある。
「お〜いお茶 カテキン緑茶」を購入するのは年配の女性が多かったので、若年層にアピールする必要があった。社内などでアンケート調査をしたところ、CMに男性が登場すると今の女性ユーザーが「自分の飲み物じゃなかったんだ」と認識するリスクが見えてきた。逆に、男性の場合はCMに女性が登場したからといって「自分の飲み物ではない」とは思わない。主要購買層が離れず、しかも、ユーザーのすそ野を広げていくには女性がふさわしいだろうということになった。
AIタレントがショートカットなのにも理由がある。「活動的」「健康的」という面をアピールするため、CMの中では動きをだす方向性を検討していた。髪はあまり長くないほうが適しているという判断だ。
AIタレントには名前や年齢など、公式な設定は存在しない。対外的に分かりやすく説明するため、若いバージョンでだいたい30歳くらい、白髪になったバージョンで60歳くらいとしている。あくまで目的を達成するための手段として、AIタレントを起用したことが背景にある。
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