「信者ビジネス」は嫌われているのに、なぜイケてる企業は“テキトーな名前”をつけるのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「アップル信者」「アムウェイ信者」といった言葉があるが、ビジネスの世界で「信者をつくる手法」は成功の法則とされている。しかし、日本では……。
顧客を洗脳して、信者に
それがうかがえるのが、さる10月にカナダを代表する古城ホテル「フェアモント バンフ スプリングス」で開催された「The Gathering 2024」だ。今年10周年を迎えたこのビジネスカンファレンスは、世界中からさまざま有名企業や代理店などのビジネスリーダーが集結して、あるテーマについて学んで知見を積み重ねている。
そのテーマとは「どうすれば顧客をカルト宗教の熱狂的な崇拝者のようにすることができるか」ということだ。
ふざけているわけではない。主催者たちは02年に『The Power of cult Blanding』という本を出して、全米で大きな話題になった。ちなみに、日本でも05年に『カルトになれ!~顧客を信者にする7つのルール』(フォレスト出版)として出版されている。主催者の考え方はアマゾンページの宣伝文句が分かりやすい。
『顧客を洗脳しろ!信者にしろ!「人口減少時代」を生き残るには、カルトしかない!』
なんて恐ろしい「陰謀」を耳にすると、「日本政府はこんなカルト礼賛イベントに参加するような企業とは関係断絶して解散請求せよ!」とパニックになってしまうピュアな日本人も多いだろうが、もしそれをやったら世界中からドン引きされる。20年にこのイベントについての記事を配信した「日経クロストレンド」の説明が分かりやすいので引用させていただく。
『カンファレンスでは毎回、カルト的な地位を確立している(グローバル)ブランドを表彰している。今年は音楽ストリーミングの「スポティファイ」、「コカ・コーラ」、スポーツ用品の「アンダーアーマー」、スナック菓子の「ドリトス」といった、日本でも認知度の高いブランドが受賞した。日本に関係するブランドで挙げるなら、ゲームの「任天堂」や「プレイステーション」も過去に受賞している』(日経クロストレンド 20年5月14日)
ちなみに、今年の「The Gathering 2024」のページには、アマゾン、ネットフリックスのほか、映画『アベンジャーズ』などでお馴染みのマーベルなども紹介されている。
つまり、「消費者の非合理的な忠誠心を勝ち取ることで、業界やカテゴリーを支配する。これこそがカルトブランディングの本質だ」(同上)という説明からも分かるように、われわれの身の回りにある「業界トップ」「シェアNo.1」といった世界的企業は、カルト宗教の「熱狂的な崇拝をする信者」をつくりだすテクニックを模倣している。
そして、世界ではそのことが反社会的とかモラルの欠いた行為だとか糾弾されないのだ。
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