「信者ビジネス」は嫌われているのに、なぜイケてる企業は“テキトーな名前”をつけるのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「アップル信者」「アムウェイ信者」といった言葉があるが、ビジネスの世界で「信者をつくる手法」は成功の法則とされている。しかし、日本では……。
自分の頭で判断できない
こういう世界の常識があるので、日本企業も当たり前のように「カルトブランディング」を実践している。ただ、「宗教=うさんくさい」というイメージの強い国なので、そんな呼び方はせずに各社・各自でテキトーな命名をしている。分かりやすいのは、「生娘シャブ漬け戦略」だ。
ちょっと前、吉野家のマーケティング担当役員が大学の講演で、「生娘シャブ漬け戦略」なんて発言をして炎上した。辞任に追い込まれたが、表現が最悪だっただけで言わんとしているのは、吉野家に足りない「女性の新客」を多く獲得するために、地方のロードサイドなどに出店を加速させて、おしゃれなカフェのようにして、若いうちから吉野家のファンになってもらうように「洗脳」していこうというものだ。
典型的なカルトブランディングの手法だが、日本でそんなことを口走ったらマスコミや弁護士からボロカスに叩かれてしまう。そこでくだんの役員は何か分かりやすくて、ウケそうな表現はないかと考えて「生娘シャブ漬け」という最悪のワードがひらめいてしまったというわけだ。
このように日本の大企業でも、カルトブランディングは普通に導入されている。ファンマーケティングとかエンゲージメントとかソフトに言って誤魔化しているが、本質的には同じことだ。
だからこそ「なんでもかんでもマインドコントロール」というムードは危ない。それはつまり、消費者や市民というのは「自分の頭で考えて判断ができない」と言っていることと同じなので、マーケティング、ブランディング、プロモーションなど顧客に何かを訴求するだけで、「マインドコントロールでだました」と叩かれてしまう恐れもあるのだ。
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