「10日で1万食」「来春までに130トン」 収まらないホタテショックの裏で、どんな支援が広がっているのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/4 ページ)
原発処理水を放出開始した影響で、水産物の輸出が大打撃をこうむっている。一方で、国内企業が応援キャンペーンを展開するケースが続出しており、好評を博しているようだ。
8月に福島第一原子力発電所から「ALPS処理水」の放出が始まった。放出に中国政府が強く反発し、日本からの海産物と海産物加工品輸入を厳格に規制する制裁措置を行っている。これによって、日本全国から海産物の中国への輸出がストップした。香港も独自に、福島県、宮城県など10都県からの海産物輸入を禁止した。
特に中国へ輸出が多かったのがホタテだ。主産地である北海道・青森県を応援する動きがスーパーのみならず、外食、コンビニにも広がっている。例えばワタミ、くら寿司、銚子丸、崎陽軒、セブン-イレブン・ジャパン、ローソンといった企業が取り組みを発表した。
北海道庁の地下食堂でも「食べて応援!北海道」として、9月12日〜10月31日のランチタイムに「ホタテフライ定食」「ホタテ竜田揚定食」を、期間限定で1日100食・各600円で提供。一般市民も利用可能で、高級品のホタテがお手頃な価格で食べられることから、正午ごろには売り切れる日も多く好評であった。
11月21日〜12月26日、第2弾「道産ホタテフェア」として、毎週火曜日のランチタイムに、「ホタテカレー」と「ホタテシチュー」を交互に提供する。1日100食・各500円としている。
水産物輸出は中国・香港がトップ2
農林水産省の「農林水産物輸出入概況」によれば、日本の水産物輸出実績は2022年実績で3873億円。前年比28.5%増と好調だった。国別構成比では、中国22.5%、香港19.5%、米国13.9%、台湾8.9%、韓国6.3%がトップ5。日本の海産物輸出で最大のシェアは中国、次に香港であって、両方合わせて42.0%と、4割を上回っていた。水産物の品目別で見ると、最も輸出額が多い「ホタテ貝」の輸出額は約911億円で、シェアトップの中国が51.3%を占める。
水産物における品目別輸出額が5位の「なまこ(調製)」は輸出額が約184億円。そのうち、香港が46.3%、中国が43.0%と、中華料理に特化した食材であることがうかがえる。ナマコは中国では「黒いダイヤ」とも言われているという。
他に「フカヒレ」「アワビ」も多くを中国に輸出しており、爆買いしていた中国による禁輸措置長期化の影響は大きい。品種を問わず、中国向けに販売をシフトしていた水産業者は、新しい売り先の開拓に追われている状況だ。
関連記事
- トランプが「ファーウェイ禁輸緩和」に傾いた真相 中国との“チキンレース”の内幕
6月の大阪G20サミットで行われた米中首脳会談。トランプは意外にも「ファーウェイ禁輸緩和」を発言した。裏側にある米中の熾烈な“チキンレース”の内幕を暴露する。 - 台湾の果物「アテモヤ」は日本で商機をつかめるか 越えるべきハードルは?
台湾の「アテモヤ」という果物が2021年末から、日本に輸入されている。マンゴーを凌ぐ高級フルーツとして知られ、別名「森のアイスクリーム」とも称される。21年9月、中国による突然の「輸入禁止」措置を受け、台湾は急きょ、官民連携で日本への販路開拓に乗り出した。果たして、日本市場で商機をつかめるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.