「10日で1万食」「来春までに130トン」 収まらないホタテショックの裏で、どんな支援が広がっているのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/4 ページ)
原発処理水を放出開始した影響で、水産物の輸出が大打撃をこうむっている。一方で、国内企業が応援キャンペーンを展開するケースが続出しており、好評を博しているようだ。
中国の禁輸措置で最も大きな影響を受けたのは、ホタテ業者だろう。ホタテの産地では北海道のシェアが圧倒的で、農林水産省の「海面漁業魚種別漁獲量」によれば、22年実績で全国のホタテ漁獲量は34万トン。そのうち、北海道が33万9600トンでほぼ100%を占める。また、養殖では全国17万トンのうち、北海道が8万5500トン、青森県が7万7900トンの順で、合わせて16万3400トンになり、他県を圧倒している。
北海道の市町村別ではどうか。21年北海道庁「北海道水産現勢」によれば、数量ベースで猿払村、北見市、稚内市、湧別町、紋別市がトップ5となっている。全てオホーツク海の沿岸にある自治体だ。つまり、福島県沖から遠く離れた、北海道のオホーツク海沿岸の漁業に大きな影響が出ているのだ。
オホーツク海のホタテ漁業者は急な中国の禁輸措置に頭を抱えており、在庫が積み上がった状態。各自治体では、ふるさと納税や給食への提供で、何とか市場価格が値崩れしないように、在庫を減らす工夫を行っている。
取引先からの相談で各社が動き出した
ここからは、飲食やコンビニなど、各社の「ホタテ支援」を見ていきたい。
ワタミでは水産企業・各漁港と連携し、日本の漁業を応援する「国産ホタテキャンペーン」をいち早く、9月11〜20日に開催。グループの居酒屋「ミライザカ」と「三代目鳥メロ(以下、鳥メロと記す)」で実施した。仕入先から相談を受けて、キャンペーン開催を決めたという。福島第一原子力発電所が処理水を海洋放出して以来、ワタミが展開する香港の外食店舗でも予約のキャンセルが相次ぎ、売上が約15%減少した。
ミライザカでは「ホタテのカルパッチョ」(548円)、「ホタテのガーリックバターステーキ」(768円)などを発売。鳥メロでは「帆立メロ寿司2種(刺身、炙り)」(438円)、「帆立のレア串揚げ」(328円)などを提供した。和洋を取り混ぜてホタテ料理を提供していた形だ。キャンペーンは好評で、10日間で1万食を販売した。
好評を受けて、東京・大井町に新規オープンした「和民のこだわりのれん街」も加えた3ブランドで10月下旬にキャンペーンの第2弾も開催。共通のメニューとして、438円の刺身、さらに各店舗で個別のメニューも展開していた。同社では今後も継続して、日本の漁業を応援できるプロジェクトを行っていくとのことだ。
スパイスワークホールディングス(東京都台東区)では、系列の「カタカナスシ」と呼ばれる都内7つの寿司店で9月14〜30日、「帆立フェアー」を開催した。好評につき、一部の店舗で、一部のメニューを今も継続して販売している。取引先から、処理水放出の影響で「輸出したはずのホタテが大量に戻ってきた」と相談を受け、開催に踏み切った。戻ってきたホタテには放出前の冷凍品も含まれていたという。
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