教習所のクルマが旧態依然としているワケ 教習車ならではの事情:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
運転免許取得のために通う自動車教習所で使われるクルマには、EPB(電動パーキングブレーキ)などの先端装備は搭載されていない。教習内容を厳格に定められている教習所ならではの事情があるからだ。教習車に求められている要素とは?
日本の自動車を巡る環境は、他の先進国と比べるとやや特殊なものと言える。運転免許センターや免許試験場で実技検定を受けて免許を取得することも制度として残されてはいるが、これは運転経験者が免許の取り消し処分を受けて、欠格期間を経て再取得する場合に利用するケースが多い。全くの新規で免許を取得するには、教習所を利用するのが一般的だ。
そう、自動車教習所に通って、段階を踏んでクルマの運転操作を習得していくことで、混沌とした日本の道路交通でも何とか交通事故を起こさずに済んでいる人も多いだろう。
最近では外国人労働者も教習所に通って、日本の運転免許を取得することも珍しくない。日本に骨を埋める予定があるのかどうか分からないが、ビジネスを続ける上で日本の運転免許を取得して運転した方が得策だという判断なのだろう。
それは日本の道路事情が規律的で、それでいながら情報量が多すぎて複雑すぎるからだろう。とにかく信号機や標識が多くて、ややこしいのである。
それとは正反対の環境が、新興国の交通事情だ。信号が少なく、交差点に早くたどり着いた方が優先されるという環境ならば、交差点はかなり危険なエリアだ。
ある程度は交通事故が起こっても仕方ないという思想と、できる限り交通事故を、そして事故による死傷者を減らそうという思想の違いと見ることもできる。日本の教習所の考え方は後者で、事実、日本の交通事故死者は1600人を下回るレベルにまで減少した(1970年前後は1万6000人を超えていた)。
であれば次の段階は、それを維持しつつ交通環境の改善を図ることにある。それくらい日本の交通環境、とりわけ道路交通の環境は規律正しく機能している。
しかしながら、実際に路上を走っているクルマの中で、教習車は運転が未熟なだけではない独特の存在感を放っている。ボディサイドにデカデカと教習所の名前が入っていたり、グラフィックが描かれていたりすることもあり、教習車だけが浮いた存在なのは、周囲への注意喚起としても重要な意義があると思うが、問題はそこではない。
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