感謝の重要性
ところで「(6)早めに成果を上げて祝う」とありますが、実務上、この「祝う」は「よい取り組みをしている人や組織に、会社や組織として光を当てること」と理解しています。例えば、以下のようなことが該当します。
トライアル部署の事例を、当該部署の方に、全社の重要な場で紹介してもらう
全社での取り組みを社内報で取り上げる。その際、積極的に動いてくれた、変化を感じている方を取り上げるなどする
組織での表彰を行う
上司が良い取り組みや動きへの感謝を示す
「自分だけ褒められたくない」「点数稼ぎのためにやったわけではない」という方もいらっしゃいます。しかし、組織で行ったり個人で行ったりしている良い取り組みに、誰も気が付いていないような状況にするのは、避けないといけません。最初に取り組む方々の勇気や行動力、日常の忙しさと折り合いをつけて取り組んでくれることへの感謝は重要です。
重要なのは「責任の範囲」
次に「(7)加速を維持する」です。「広く浅い」成果も、「狭く深い」成果も、基本的に加速を維持する際に、行うことは同じです。それは「取り組みを止めないように支援すること」及び「どこかのタイミングで本格的な施策に取り組むこと」です。
前者の「取り組みを止めないように支援すること」は、「広く浅い」パターンでは、仮に長時間労働改善のアイデアを募る施策を行ったら、その中から1つでも2つでも実際にやってみることが重要です。会議ポスターを作ったら、次は、議事録アプリを導入して、会議終了時点には議事録が完成しておけるようにするなど、取り組みを次の取り組みにつなげていきましょう。
「狭く深い」パターンでいえば、トライアル部署で生まれた好事例を横展開することや、職場ミーティングなどがこれにあたります。職場ミーティングとは、月1回など定期的にトライアル部署で(1)前回の職場ミーティングから今回までの間に取り組んだこと、(2)そこで感じた変化、(3)次にやってみたいこと――を話し合う場です。こうした場で、職場で良い兆しや変化を見いだし、次の施策につなげていきます。
後者の「どこかのタイミングで本格的な施策に取り組むこと」とは、「広く浅い」もしくは「狭く深い」取り組みの中で見つけた「結局、当社(自組織)が解決しないといけないのはここだ」というテーマの改善を目指すことです。
これは通常、経営層や事業企画部門、本社スタッフなどの意思決定や取り組みが必要です。こうしたテーマは、ずっと同じ組織にいると気が付かないときもありますし、多くの方が気付いていても諦めているケースもあります。経営層や本社でもすぐに変えられない内容かもしれませんし、実は経営層や本社自身が変わらないといけない内容の場合もあります。簡単ではないことは承知したうえで、「(7)加速を維持する」では、改革を現場・職場・個人の責任に留めないことが大事です。読者の皆さんの組織での積年の課題は何でしょうか?
今回は「アタリマエ行動への進化のステージ」について、長時間労働の改善を題材にご紹介していきました。コッターが実務的にどのように扱われるかについても少し感じていただけたかもしれません。次回は「しくみへの組み込み、新しい文化に基づく新たな変化のステージ」を取り上げます。
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