「コロナ禍以前」に復活の小売業 識者が2023年のホットトピックを振り返る:インバウンドも回復(3/4 ページ)
コロナ禍が収束の兆しも見せ始めた2023年。小売業の各社は、どんな取り組みを行い、またどういった状況にあるのか。小売業に詳しい著者が、各業界別に2023年の動向を振り返る。
圧倒的利益率のドンキ
GMS・スーパーマーケットでは、ドン・キホーテを擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の拡大が目立ち、営業利益率もダントツです。イオンは赤字続きだったGMS事業がようやく黒字転換したものの、営業利益率は0.4%。PPIHのように、事業単体で大きな収益を確保するまでには至っていません。
イトーヨーカ堂は、CAGRが−17.1%、営業利益高は4億円と、グループとしてどのような価値を創出していくかを再検討する過渡期を迎えています。実質賃金が10月時点で18カ月も連続のマイナスが継続している中、物価は依然上昇中です。
賃金と物価のギャップに対して、今後もGMSやスーパーでは低価格を求められることが予想されます。エリア別や店舗別、時間別に価格を柔軟に変更し、自社の収益とニーズ対応を両立するダイナミックプライシングの必要性が高まることでしょう。
底を脱した百貨店 出店以外の稼ぎ頭が焦点
百貨店は以前から閉店が加速しており、コロナ禍によってさらに悪化した市場です。業態トップの3社は、いずれもCAGRがマイナスですが、三越伊勢丹ホールディングスが4.9%の営業利益率で過去最高益を達成するなど、復調軌道に入っていることは明らかでしょう。
今後、百貨店は出店によって拡大することが難しいのはいうまでもありません。既存店の活性化か新事業開発、あるいは海外出店以外に道は残されていないでしょう。既存店においては、テナントの再編やデータ活用の高度化、顧客体験価値構築。さらには「売らない売り場」などの再定義、リテールメディアをはじめとした小売以外の収益創出などが必須の事項です。
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