生成AI、住友化学の活用法は? 最大50%超の効率化も:生成AI 動き始めた企業たち(2/2 ページ)
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第15回は、住友化学を紹介する。同社は10月から、自社版のChatGPTとして「ChatSCC」(チャットエスシーシー)を開発し、約6500人の全従業員を対象に運用を開始した。生成AIの活用は、同社のビジネスをどう飛躍させるのか。
Q. 自社の競争優位性をどう確保するか
当社の強みは、長年にわたる研究開発、工業化、安全な運営に関するコア技術にあります。生成AIとの連携により、当社独自のコア技術を活用したビジネス展開や競争力の確保を目指しています。
今後はChatSCCに当社独自データを連携させ、社内の各組織で蓄積されたナレッジをより効果的に利用できるスキームを整備していく予定です。当社の複数領域のコア技術の融合により新規製品の開発サイクルの加速、既存製品における新規用途の探索に加え、事業活動の基盤強化などを推し進める予定です。将来的には、特定分野のデータをもとに追加学習を施した“特化型モデル”の構築なども視野に含めつつ、一層の業務効率向上および付加価値創出の取り組みを加速していきます。
Q. 生成AIがもたらすリスクと対処法をどう考えるか
個人情報や機密情報の漏えいリスク、国内外を含む法令への抵触、第三者の著作権侵害のリスクが考えられます。さらに、生成系AIは人間のような文章を生成することができるため、倫理的な問題が発生するリスクがあります。差別的な表現や攻撃的な内容の生成結果により、人々の感情や意見に悪影響を与える懸念があります。当社では、入力情報が外部に漏れないセキュアな環境を構築し、当社独自の情報を適切に取り扱うことができるように努めています。また、禁止事項や注意事項を定め、利用者に周知し、リスクを軽減するように努めています。
また、生成系AIによって生成された結果に虚偽の情報(ハルシネーション)が含まれる可能性があり、誤った情報を信じて判断してしまう危険性もあります。ガイドラインでも周知はしているものの、今後も同様のリスクは懸念されます。対応として、社内データを情報源として回答を生成する仕組みを設けることで、確実性の高い情報に基づく回答の生成、原典情報をすぐに確認できる状態にすることで、ハルシネーションの低減を検討しています。
Q. 生成AI開発に関するルール整備をしているか
前述のリスク軽減のために、禁止事項や注意事項を規定化し教育資料を作成して従業員に周知しています。また、当社独自の指示や質問のプロンプト集、業務シーンで有効な指示文書作成テクニックの教育動画を従業員に公開しています。さらに、社内での有効な事例やプロンプトエンジニアリングのノウハウなどを共有する予定です。
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