携帯ショップに警備会社──不人気業種でも「人が集まり辞めない」企業がある その秘密は?:働き方の「今」を知る(3/6 ページ)
人手不足が深刻化している。そんな中、不人気な業種でも独自の企業努力によって好業績を維持し、エンゲージメントを高め、採用や育成に成功している企業がある。では、それらの企業では具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。携帯ショップや警備会社の事例を紹介する。
「個人ノルマなし」でも、厳しくないワケではない
とはいえ、収益を上げるには相応の販売実績が必要だ。同社は販売実績も高いレベルであるゆえ、よほど厳しいノルマが課されているものと思われるかもしれない。しかし驚くべきことに、同社には個人の販売ノルマは存在しない。あるのは店舗単位での販売目標だけだ。それをメンバー同士でフォローし合いながら達成することで、先述の高い報酬水準を実現できているというわけだ。
しかもノルマを無理強いしないから強引な押し込み販売もなく、来店客の満足度は向上する。販売実績も顧客満足度も高いことから、同社は各キャリアに対して強い発言力を持ち、キャリア各社から余計なタスクが降ってこないよう、社長が壁になって社員の労働環境を守っているのだ。
労働環境といえば、以前は同社でも相応に残業が発生していたが、そんな状態を根本から見直し、残業削減に取り組んだのは、社長の号令によるものだ。
残業自体を申請制にするとともに、残業発生の要因となっていた閉店後の清掃作業を開店前に移動させるなど数々の手を打つことで、現在の全社平均月残業10時間程度を実現させている。
ここまでを見てきた限り、まったく死角のないパーフェクトな会社のように感じられてしまうが、やはり業種ならではの大変な面もある。仕事柄、常に専門知識のアップデートが必要であるし、勤怠にも厳しい。個人ノルマはないとはいえ、チーム目標は相応に高い水準を追うことになるので、チームワークを発揮して頑張れること、そして社外でも通用する人間性を養成するにあたっては成長意欲も必要だ。
労働・職場環境が整っており、離職率が低く、福利厚生や研修など、従業員へのサポート体制も手厚い企業のことを総称して俗に「ホワイト企業」と呼ばれる。
ホワイト企業にもいくつか種類があり「仕事はラクだしプレッシャーもないため居心地は良いが、ルーティン業務中心で成長実感が持てず、年功序列のため成果を挙げても給料が変わらない」という「まったりホワイト企業」もあれば、「高給と引き換えに要求水準が厳しく、相応の業務量であっても定時までに必ず終わらせなければならないプレッシャーに日々直面する」という「高密度ハードワークホワイト企業」もまた存在する。
すなわちアドバンス社は後者タイプに属する「高密度ハードワークだが、報酬も定着率も従業員エンゲージメントも高い優良ホワイト企業」といえるだろう。
関連記事
- V字回復のサンリオ 「頑張ってもムダ」「挑戦が称賛されない」風土をどう変えたのか
長らく業績悪化に直面していたサンリオが、V字回復を見せている。以前は「頑張っても報われない組織風土」「挑戦が称賛される社風でない」風土だったサンリオを、2020年7月に社長に就任した辻朋邦氏はどう変えたのか。 - ドムドムハンバーガー驚異の復活 風向きを変えた「3つの出来事」
「このままなくなってしまうではないか」と悲観されていた、ドムドムハンバーガーが復活し注目を集めている。最盛期の90年代には全国400店以上にまで拡大したものの、閉店が相次ぎ30店舗以下に。しかし、2020年度から最終黒字に転じて息を吹き返し始めた。その背景には何があったのか──? - 店舗予算は「分かりません」 数字を知らないキャンディ店、社長はどう変えた?
店舗予算は「分かりません」「日々頑張ります」――アメ細工のパフォーマンスで若者から人気を得ている「PAPABUBBLE」だが、経営はアナログで行き当たりばったりだった。そんな中、4月に代表に就任したのは電通やゴンチャジャパンでマーケティングを極めてきた越智大志氏。就任後5カ月で、会社はどう変わったのか。 - 「業務ミス」で教員に95万円請求──個人への賠償請求は合法なのか?
川崎市の市立小学校で、教員のミスによりプールの水が出しっぱなしになった結果、約190万円の上下水道料金が発生した。市は損害賠償金として、約95万円を、教員と校長に請求した。このように業務上のミスをめぐって、個人へ賠償請求することは合法なのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.