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なぜ会社員もせっせと「裏金」をつくってしまうのか 日本にはびこる「員数主義」スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

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自分を正当化してせっせと裏金づくり

 みな頭では「良くない」ことは、分かっている。しかし、「みんなやっている」「数字的に帳尻が合えば問題ない」「組織のためにいざというときにプールしておくカネだ」なんて悪魔のささやきに負けて、なんとなく自分を正当化してせっせと裏金づくりに勤(いそ)しんでしまうのである。

 分かりやすいのは2021年に発覚した、東証1部上場(現プライム)のシステム開発会社ネットワンシステムズの元社員による「裏金づくり」だ。

 同社は中央官庁のシステム管理業務を受注していた。そこでこの元社員は、架空の保守管理業務を取引先に発注したことにして会社側に約2億円を支払わせた。しかし複数の取引先を経て、最終的に約1億7000万円を私的に得たという背任容疑で逮捕されたのだ。


不適切事案について(時系列、出典:ネットワンシステムズ)

(出典:ネットワンシステムズ)

 それは裏金じゃなくて横領じゃないかと思うかもしれないが、興味深いのはこの元社員が逮捕後に「(会社のために)リスク費を積み立てていた」などと供述していたことだ。

 公共案件の入札はざっくりとした仕様であることが多く、さらに追加で予期せぬ追加費用が出ることもある。同社ではその対策のための資金は「リスク費」や「プール金」と呼んでいたという報道もある。つまり、私利私欲のためではなく、「会社の業務」として裏金をつくっていたというのだ。

 そんなバカな話があるわけがないと思うだろうが、こういう「組織ぐるみの裏金づくり」はみな大きな声で言わないだけで、いろいろな業界にある。その中でも多いのが公務員だ。

 例えば、島根県西ノ島町が23年6月に公表した公金管理に関する内部調査によれば、12年から22年の10年間で、町役場の各課がつくり出した裏金は約2260万円にものぼったという。手口は主に、協力者のいる文具店に架空請求で代金を支払って、店側がプールする「預け」という手法だった。

 ちなみに、この文具店には契約内容と異なる物品を納入させる「差替え」と呼ばれる手口で、約4020万円の不正経理も見つかっている。

 人口3000人にも満たない小さな町でさえこの有様だ。すさまじい金が動く大都市の自治体など、いくらでも裏金がつくれるのは容易に想像できよう。

 事実、06年に発覚した岐阜県庁の裏金問題では、県職員、組合、県教委など膨大な数の人々が1992年度からの12年間で約17億円の裏金をつくったことが分かっている。

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