なぜクルマは高くなってしまったのか 高額化に恩恵を受ける人も:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
自動車の価格がどんどん高くなっている。製造コストや開発コストの増大に加えて、先進装備の充実や安全性向上も求められているからだ。メーカー、ディーラー、そしてユーザーにとって、高額化はどのような意味があるのか。
クルマの価格が高くなる要素とは
円安による原材料価格や電気料金などの製造コストの上昇は、無視できない値上げ要素となる。このところ食品などの値上げが相次いでいるが、クルマの部品についても同様だ。10銭単位でサプライヤーとメーカーが価格交渉をしていると聞くくらいだから、実際の購買の現場ではさらに熾(し)烈な交渉が行われているのだろう。
クルマの値上げが発表されることも珍しくないが、最近は納期の方が問題となっているから、価格や値引きなどよりも、まずは納期を優先するというユーザーが増えているのは確かで、これが自動車メーカーの利益を押し上げている1要素になっているのは間違いない。
最近のクルマが先進運転支援システムのADASを標準装備としていることは、分かりやすい値上げ要素だ。衝突被害軽減ブレーキや路線逸脱防止機能などは、ドライバーのうっかりミスやハプニングに対してサポートしてくれるから、ほとんどのドライバーが歓迎する装備だろう。
これをオプションとすると結構な加算となるが、標準装備として全車に装着すればスケールメリットで価格を抑えることができる。そうした分かりやすい装備の追加で価格が上昇しているならユーザーも納得しやすいが、それだけではない。
高い衝突安全性能を確保するには、衝突被害軽減ブレーキや路線逸脱防止機能などのアクティブセーフティ(積極的な予防安全性能)だけでなく、パッシブセーフティ(受動的な予防安全性能)も高めることが必要だ。そのためには衝撃吸収構造のボディや、ドライバーが自ら緊急回避できるだけのハンドリング性能、ブレーキ性能などが求められる。
特に最近は側面衝突から乗員を保護するために、横方向からの衝撃に対する安全性を確保する必要から、ボディの全幅が大きくなっていく傾向にある。ボディが大きくなれば、単純に材料費がかさむことになるが、それで車両重量が増えるとやはり衝突安全性や乗り心地などに影響するため、軽量化のためにまた材料コストが上昇することにもつながる。
金属部品の樹脂製への置き換えはどんどん進んでいるが、昨今は原油価格も上昇しており、樹脂化もコストを考えると難しいレベルになってきた。
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