シブサワ・コウ明かす『信長の野望』位置情報ゲーム進出の狙い:JR東海ともコラボ(2/2 ページ)
シブサワ・コウことコーエーテクモホールディングスの襟川陽一社長、『信長の野望 出陣』の開発プロデューサー、「信長の野望」シリーズのIPプロデューサーの3人に位置情報ゲーム進出の狙いを聞いた。
JR東海や実在する施設とコラボ
――小笠原プロデューサーは今作の位置付けを、どう考えていますか。
小笠原: 位置から感じる要素と、ここでこういうことが起きたんだという戦国時代の知識の要素がうまく掛けあわさり、コンテンツとして非常にまとまりがいいと思いました。今を生きるわれわれが過去の日本の歴史に思いをはせながら、ずっと楽しんでいられるゲーム。しかも健康に良いとなると、一度プレイされた方はやり続けてくれるだろうなと思っています。
そういう方々に本当に正面から戦国武将や、この日本の国土の文化・歴史の楽しさがじわっと伝わるコンテンツにしようという大枠から、菊地と一緒に具体化していきました。
――単なる領地拡大ゲームではなく、『信長の野望』シリーズの魅力である領国経営ゲームの要素も『出陣』には入っています。
シブサワ: ただ単純に勝って終わりというのではなく、その戦いで勝つための準備を内政や外政でやっていくところがまた面白いところです。『出陣』も、ただ歩いているだけでなく、その中でいろいろなアイテムや資材を有効活用しながら領地を広げていく。そういうマネジメント要素も持っていますから、内政をしっかり行って、各武将なり、部隊を強くしていくことが必要です。ですから中身としては歴史シミュレーションゲームの『信長の野望』シリーズと核の部分は同じです。
――シブサワ・コウさんは『出陣』をどのくらいプレイしているのですか。
シブサワ: いまはプライベートのゲーム時間のうち半分ぐらいは『出陣』をやっています。それ以外だと同じ「信長の野望」シリーズではありますが、MMOである『信長の野望 覇道』などのスマホゲームで遊んでいます。据え置き機ですと、9月に弊社が発売した『Fate/Samurai Remnant』もプレイしていましたね。この作品も完成するまでテスト段階で何百回もエンディングまでやっているのですが、リリースしてからも製品版を自分のお金で買って、プレイしています。
――社長自ら自社のゲームをやり込んでいるわけですね。
シブサワ: いつもゲームが完成すると、自分で実践していることです。今は『出陣』に携わっている時間の比率が大きいですね。
――位置情報ゲームはその性質上、そこに実在する施設とのコラボを積極的にやっています。『出陣』ではいかがでしょうか。
菊地: 既に各地方のお祭りとコラボしています。例えば10月14、15日に岐阜県関ケ原町で開催した「大関ケ原祭 2023」では『出陣』とコラボし、ゲーム内で3×3マスを埋めるパネルミッションを実施しました。各ミッションを達成するとゲーム内アイテムがもらえる形ですね。さらに、現地に行けない人でもパネルが1列そろう形で用意していました。またゲーム内のイベントだけでなく、ブースとしても出展しました。
他にも、10月28日に甲府市で実施した「第50回信玄公祭り」にも出展し、同じように3×3マスのパネルミッションのイベントを展開しました。11月16日から12月14日にかけては、JR東海とコラボした3×3マスパネルミッションを実施しています。これ以外にも地方自治体や企業とのコラボを今後予定しています。
――架空世界のイベントと現実世界のイベントとの接点を見いだして展開することが多い他作品と比べ、『出陣』では現実のお祭りと直接結び付くのが強みと言えますね。
菊池: 『出陣』はご当地や歴史と非常に親和性があるので、ゲーム内と現実の日常をより豊かにしていけるゲームだと思っています。そこを突き詰めていきたいですね。
今もう一つ実装しているものとしては「日本100名城」とのコラボですね。これは日本城郭協会さんが定めている「100名城」を訪れるとゲーム内の名城図鑑が埋まったり、中にはその「名城武将」が手に入ったりするものです。既に多くのプレイヤーが、実際にお城に行って写真を撮ったり、ゲーム内でお城を登録したりしています。
――『出陣』の地図データには、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資している米MapBoxを使用していますが、なぜですか?
シブサワ: 実は孫(正義)さんに相談して決めました。弊社とソフトバンクとは長いお付き合いがあります。マップの情報に関しては、われわれがオリジナルでやると大変な労力を伴いますので、既にサービスとして展開している企業と提携して実装しようと考えていました。その中で当社が作ろうとしているゲームを実現できる機能があって、ご縁のある企業が良いということで採用しましたね。
――『出陣』では今のところ現代のマップで展開していますが、戦国期とまでいかなくとも、江戸時代の古地図でも遊べるのではないかという思いもあります。この辺の実装予定はいかがでしょうか。
菊池: 実は開発中に何度か検討しています。小笠原からも古地図の画像を大量に渡されたことがありました。ただ、最初から古地図で展開する形になると、歴史ロマンが混ざってファンタジーさが出てしまいます。まずは現代とリンクしてほしいとの狙いから、現代マップの3Dのフィールドで戦国時代を表現することで、その中を歩いている感覚をお伝えしたいと思いました。ですが、将来的にはバリエーションとしては検討したいと思っています。
シブサワ: 東京大学などに詳細な江戸の地図が保管されていて、ここはどの大名の下屋敷や上屋敷、どの旗本の屋敷があるというのが全部残っているんですよね。『出陣』を通じて戦国時代に興味が出て、そこから歴史そのものが好きになる窓口になるといいですね。
編集部より:12月15日の早朝に続きの記事を公開します。お見逃しなく!
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