値上げラッシュでもなぜ「値下げ」? 幸楽苑・ガスト・なか卯、それぞれの戦略(1/4 ページ)
値上げラッシュが続く中でも値下げに踏み切る外食チェーンは少なくない。なか卯・幸楽苑・ガスト、それぞれの懐事情と狙いを分析する。
物価高が続く昨今は、特に懐が寂しいと感じる消費者も多いのではないだろうか。スーパーではさまざまな食材が値上げされ、外食チェーンも相次ぐメニュー改定で値上げを実施している。「ワンコインランチ」など遠い過去の話に思える。
主な要因はアフターコロナでの好景気と、ウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰だ。一方で2023年に入ってから、一部の外食チェーンが値下げを行うようになった。原材料費、水道光熱費が下がっていない現状で値下げは業績を圧迫しないのだろうか、そしてなぜ値下げに踏み切ったのだろうか。主な動きと考えられる値下げの理由について探ってみた。
主力の親子丼を値下げした「なか卯」
ゼンショーホールディングス(HD)が運営する「なか卯」は、4月に主力商品である親子丼の値下げを行った。並盛を490円から450円へと値下げしており、ごはん大盛サイズも同じく560円→520円と40円値下げ。当時は卵の価格が上昇、1パック300円以上で販売するスーパーも見られたため、SNSなどでかなり話題となった。
全体的なメニュー改定による値下げではなく、親子丼のみを対象としているものとはいえ、22年7月に親子丼並盛を480円→490円へと値上げしたばかりだった。ここに来ての値下げは業績に影響しないのだろうか。
ゼンショーHDの業績推移を見ていくと、実は値上げに対しかなりの余力があることが分かる。牛丼チェーン「すき家」を主力とする同社だが、コロナ禍ではテークアウトやデリバリーとの相性が良いファストフード業態が軒並み好調となり、業績を伸ばした。郊外店に重点を置く立地戦略も功を奏したようで、19年3月期から23年3月期までの業績は次のように推移している。
売上高:約6076億円→約6304億円→約5950億円→約6585億円→約7799億円
営業利益:約188億円→約209億円→約120億円→約92億円→約217億円
21年3月期、22年3月期は減益となりつつも黒字を維持。そして今期は第2四半期時点で前年比約20%の増収、営業利益は約253億円と2倍以上に膨らんでおり、値下げを実施する余裕はありそうだ。なか卯事業がゼンショーの主力事業ではないことから考えても、値下げによる業績への影響は少ないとみられる。
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