増え続けるLUUP ルーツは「創業時に断念した事業」にあった:2023年、話題になった「あれ」どうなった?(2/3 ページ)
街中でスーッと目の前を過ぎていく電動キックボードを見る機会が増えた。電動キックボード普及の立役者となっているLuup社は、実は創業当初から電動キックボードを取り扱う予定があったわけではない。現サービスは当初の事業を「あえなく断念」した結果、生まれたものだという。いったい何があったのか。今年、新たなブームを作ったLuupの裏側に迫る。
電動キックボードに「こだわっているわけではない」
同社の目的は「お年寄りまで幅広い年齢が乗ることのできるユニバーサルなモビリティ」を広めることにあるという。そのため「年齢を問わずに、安全で便利に乗れるモビリティが開発でき、安全性が確認できた際は、電動キックボードからは撤退してもかまわないと考えています」と村本さんは話す。
では実際、現在はどのような利用者が多いのか。村本さんは「20〜50代まで幅広く、男女問わずご利用いただいています。他のシェアサイクルなどと比較すると、女性比率が高いのが特徴です」と話す。
通勤、通学、買い物などの日常的なシーンで活用している人も見られる。1〜2駅分の「歩くとちょっと遠い」距離や、地図上では近いが電車では乗り継ぎが不便な駅間の移動で使われることもあり、ライド時間は10分前後が多いという。
11月には「10分以上のライドを安くしてほしい」「気軽に寄り道したい」「通勤や通学に使いやすくしてほしい」との声にこたえてサブスクプランの先行体験を開始した。先行体験の申し込みは想定以上の数になったという。
創業理由にもかかわる高齢者の利用については「将来的には、高齢者も乗れるような3〜4輪で安定性の高いユニバーサルなモビリティの普及を目指している」という。
事故や違反の事例も
一方、普及に伴い利用者による事故や交通違反の事例も出始めている。前述の改正道路交通法の適用以降、16歳以上であれば運転免許なし、ヘルメット着用は努力義務で利用可能となった。街中でLuupの利用者を見ても、あまりヘルメットを着用している人は見かけない。
「法改正により、16歳以上であれば運転免許が不要になったため、基本的な交通ルールに対する利用者の理解をそろえていく必要があります。新しい交通ルールの周知徹底や安全な走行のための取り組みは最重要事項と捉えています」(村本さん)
年齢確認の徹底や交通ルールテスト全問連続正解の義務化、注意事項の表示、安全講習会の開催などの啓発により、利用者の事故防止と交通ルールの徹底に努めているという。
事故が絶対に起こらない交通手段は存在しないが、電動キックボードに対する生活者のイメージがまだ定まりきらない中で、事故や違反に対する不安がどこまでぬぐえるかは特に重要なポイントとなる。事故や違反の件数は今後の普及ペースにも影響するだろう。
関連記事
- 金閣寺にも「LUUP」 新しい足になりつつある電動キックボード、まだまだ課題も
7月1日の法改正によって、電動キックボードの利用ハードルが下がりました。京都の金閣寺などにも設置が広がる電動キックボード、新たな足として定着しつつあるが、まだまだ課題もあるようです。 - 東急歌舞伎町タワー、開業9カ月でどんなことが見えてきた?
4月に東京・新宿に開業した「東急歌舞伎町タワー」は少し変わった複合施設だ。エンタメとホテルに特化しており、オフィスや高級ブランドは入っていない。ちょっと変わった業態の9カ月の軌跡について、運営するTSTエンタテイメントの木村社長に取材した。 - ChatGPT進化の軌跡 たった1年で「どこまで」進化した?
- 「缶コーヒーを飲まない若者」に人気のボス缶 なぜ「2カ月で2000万本」も売れたのか
2023年3月発売の「ボスカフェイン」の販売が好調だという。「カフェインを摂取できる」ことを打ち出すパッケージが、なぜ「缶コーヒーをあまり飲まない若い人」をターゲットに好調な売れ行きを示しているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.