大正製薬、創業家による「7000億円超のMBO」に、投資家の批判が集まるワケ:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
大正製薬ホールディングス(HD)は2023年11月24日、日本企業としては過去最大の経営陣主導の買収(MBO)を実施すると発表した。このMBOにおいて、創業家が代表を務める企業が株式公開買い付け(TOB)を実施することで市場から株式を買い集める。その総額は約7100億円に達する見込みだ。
巨額資金、どのように用意?
ちなみに、数千億円ものMBO資金を創業家はどのように用意するのか、疑問に思う方もいるだろう。
この点、MBOのための巨額の資金調達は、一般的に複数の方法を組み合わせて行われる。まず、経営陣や企業関係者が自己資本を投入することが基本だが、今回のようにMBOの規模が大きい場合、外部からの資金調達が必要となる。
外部資金の主要な調達源は、銀行融資やプライベートエクイティファンドからの投資だ。銀行融資は、買収対象となる企業の将来的なキャッシュフローや資産を担保として、銀行から直接借り入れる方法だ。一方、プライベートエクイティファンドからの資金調達は、ファンドが企業の一部または全部を購入し、その後の企業価値の向上と売却によって利益を得る戦略を取る。
また、買収対象の企業が保有する資産を担保に、証券化を通じて資金を調達する方法もある。これは、企業の不動産や特許などの資産を証券化し、投資家に販売することで資金を集める手法もある。
大正製薬のMBOをはじめとして、近年ではベネッセ、シダックスなど、足元では巨額MBO事例が目立つ。翻って日本の上場企業を見ると、地銀セクターなどを筆頭に、市場にはPBR1倍割れの銘柄が数多く存在している。資産価値が見過ごされている日本企業に対して、今後もMBOや敵対的買収、非公開化や再編成が期待される一方で、市場の不信感を招かないような再編の手綱さばきが求められる。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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