結局、店員が常駐……日本の「もったいないセルフレジ」 米小売業との決定的な違いは?:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
セルフレジに複数人の店員が常駐する日本のスーパーマーケット。米国では日本より少ない人員でスムーズに運用できている店舗が大半だ。両者の違いは一体、どこにあるのか――。
セルフレジは全体最適
来店客は買い物の時に、買い物カゴの下のほうに重いものや硬いものをまず置き、その上に軽いものや柔らかいものを積んでいき、最後にレジに並びます。通常レジやセミセルフレジの場合、精算の際は店員が買い物カゴの上のほうにある軽いものや柔らかいものをまず横によけ、重いものからスキャンして精算済みのカゴに入れて、最後によけておいた軽いものを載せる。そして、精算が済んだ来店客はサッカー台に行って、下にある重いものを取り出し、レジ袋やマイバッグに詰めていく。つまり、来店客と店員で同じ作業を3回も行っており、非常にムダが多いのが現状です。
セルフレジであれば、来店客はレジ精算と一緒に直接レジ袋やマイバッグに商品を詰めることができます。来店客は混雑しているサッカー台に並ぶ手間も省けます。結果として、有人レジはサポートが必要な年配の来店客や、心身の不自由な人に時間をかけた対応ができるのです。
また、レジに必要な人員の総数が削減されることで、総菜製造や接客のような技術を必要とする部門に人員を割くことも可能になります。セルフレジは来店客も店舗も利点がある全体最適な仕組みといえるのです。
企業名は挙げませんが、新店や新しい仕組みを入れた際に、来店客の全ての体験が終わってから体験のフィードバックを取っている企業も存在します。顧客体験を重視して自分たちの目で確認する前提に立てば、こういった仮説と検証のサービス改善設計をするべきでしょう。日本の多くの小売業がそうであるように、システムを供給するITベンダーに小売業が丸投げしている限りは、今の状況から脱却できないと筆者は考えます。
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