スイーツ市場は横ばいなのに、シャトレーゼ「一人勝ち」のなぜ 不二家、コージーコーナーとの違い(3/3 ページ)
近年横ばいが続く、菓子市場。その中で一人、気を吐くのがシャトレーゼだ。不二家や銀座コージーコーナーといった競合が苦しむ中、なぜ「一人勝ち」できるのか。
シャトレーゼの安さを支えているのが工場直販(SPA)モデルだ。北海道から九州まで全国10カ所に工場を構え、各工場から店舗へ直販する体制をとっている。
工場では自動化を進めており、工場と店舗の間に問屋などの中間業者を挟まないため、コスト削減にもつながる。仕入面では卵や牛乳、果物などの主要材料を地元の契約農家から直に仕入れる体制をとっており、こちらも中間業者を省くことで低コスト化を実現している。
製造から物流、小売までを自社で管理するSPA業態は、もともとユニクロなどアパレル業界で発展した言葉だが、現在では他業態にも普及している。同じく安価がウリで食のSPAとして挙げられることも多いサイゼリヤも、ハンバーグやホワイトソースを仕入先に近いオーストラリアの工場でまとめて生産しており、徹底した効率化で安さを実現している。
なおシャトレーゼの店舗運営では、製品の大半を工場で製造している。店舗の工房で作ることもあるが、簡素化できているのか本格的なパティシエを置く必要が無く、工房スタッフをパートやアルバイトで募集している。バイト中心で運営できる点は、フランチャイズオーナーにとって評判のようだ。
都市型店舗「ヤツドキ」も展開中
シャトレーゼは16年3月期から海外にも出店し、現在はシンガポールやインドネシアなどアジア圏を主軸に180店舗(1月18日時点)を展開している。基本的には国内のシステムを踏襲し、海外向けWebサイトでも日本ブランドを訴求する。
国内では、従来の郊外型と異なる新業態店を模索している。19年9月に銀座で1号店をオープンした「YATSUDOKI(ヤツドキ)」は都市型の店舗だ。現在では東京のほか山梨や兵庫などに20店舗以上を展開し、特に都内では従来と比較して駅近の店舗が目立つ。
ヤツドキはシャトレーゼよりも高級感のある店舗デザインで、より敷居が高そうな印象を受ける。商品を見るとカットケーキがおよそ500円台、ホールケーキは3000〜4000円台と必ずしも高価格帯とはいえないが、シャトレーゼよりは高めの設定だ。高級感をイメージしているのは、目的買い客を増やし、コンビニスイーツや他チェーンとの競合を避けるためだろう。郊外型の安い店舗で成功したシャトレーゼだが、都市部で成功できるか。ヤツドキの今後に注目したい。
著者プロフィール
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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