「そごう・西武」アジアに増える巨大店舗 大苦戦する国内と何が違うのか?(5/5 ページ)
かつて国内最大の百貨店チェーンだったものの、経営再建・セブン&アイ傘下を経て今や日本国内に10店舗のみとなってしまった大手百貨店「そごう・西武」。その「そごう・西武」の新店舗がいま、アジア各地に続々と誕生していることをご存じだろうか。正念場を迎える日本の百貨店業界にとってのヒントを探る。
日本の百貨店との一番の違いは?
海外の「そごう・西武」は、出店方式こそかつての日本の大手百貨店を彷彿(ほうふつ)とさせるとはいえ、その店づくり自体も同じかというとそうではない。
海外進出から20年以上を経て、「そごう・西武」をFC展開するいずれの海外企業も「日系百貨店」であることをアピールする一方で「店舗の現地化」を進めている。そうした「そごう・西武」のFC店舗では、ブランドや百貨店向け化粧品など高級品を販売する売り場の充実を図りつつも、日系ブランドを中心にファストファッション、家電量販店、スマホショップ、均一ショップ、中古ショップ、アニメショップ、ゲームセンター、シネマコンプレックス、格安のフードコート、スーパーマーケットなどといった、「幅広い世代が楽しめ、日常使いにもハレの日にも対応する多様な専門店」を導入している店が多くみられる。
それゆえ、日本の百貨店よりも客層が若く、「百貨店+ファッションビル+ショッピングセンターのいいとこどり」といった雰囲気の店舗が多いことも特徴。今回紹介した3つの新百貨店も、いずれも若者・ファミリー世代向けの商業テナントや体験型施設、映画館などが同じ建物内に設けられる計画だ。
このように幅広い層をターゲットとしたそごう・西武の店舗はアジア各地でみられる一方で、近年開業したインドネシアやマレーシアのそごう・西武の店舗(特に「西武百貨店として運営されている店舗」)では、そごう・西武自体が「郊外型ショッピングセンターを『高品質化して差別化を図る』ための核店舗」として入居しているものもみられる。
そうした「ショッピングセンターの核店舗」となっている店舗では、幅広い集客を目指す店舗の導入はショッピングセンター側に任せる一方で「そごう・西武=高品質のものをそろえる高級日系百貨店」として、現地富裕層、さらには外国人観光客の人気を集めている例もある。
日本がまいた「そごう・西武」の種は、アジア各地で成長し、進化を遂げ、併せて32店舗(今回取り上げた開店予定の店舗を含まず)の海外店舗を擁する一大百貨店グループとして現地に根付くことになった。今やその半分以上が、そごう・西武の資本を離れたあとに現地法人が開業させた店舗となっている。
海外で「そごう・西武」の店舗に入店した際には、一味違う魅力で人気を集める日本生まれの百貨店の「勢い」を感じられるかもしれない。
関連記事
- 24年閉館「五反田TOC」はどう変わる? 世にも珍しい“巨大卸売ビル”の過去と未来
半世紀にわたり、五反田エリアのランドマークとして親しまれてきた「TOCビル」が、建て替え・再開発のため2024年中に閉館する。高度経済成長期、この地にこれほどまでに大きな建物が生まれ、「卸売店を中核としたテナントビル」となったのには、どういった背景があったのか――。 - ダイエーVS.西友の「赤羽戦争」はなぜ起きた? 駅東口2大スーパー、半世紀の歴史に幕
東京・赤羽駅東口を代表する老舗スーパーとして約半世紀にわたり親しまれた「西友赤羽店」と「ダイエー赤羽店」が今年、相次ぎ閉店。かつて両店は「赤羽戦争」と呼ばれる歴史的商戦を繰り広げていたことをご存知だろうか――。 - 御堂筋が「シャンゼリゼ」に? 大阪の街並みに“激変”迫る
大規模開発が並行して進む大阪。街並みはこれから、どんな変貌を遂げていくのか――。前編では、大阪市の都心エリアにあたる「大阪駅周辺」「中之島」「御堂筋」「難波」の開発プロジェクトとその特徴を見ていく。 - 「二流の地」から「流通の覇者」へ イオンが成功した出店戦略とは
2022年2月28日、長崎県佐世保市にある総合スーパー「イオン佐世保店」が閉店した。この閉店は、イオングループにとって「ひとつの時代の終焉」を意味するものであった。実は、イオン佐世保店は「ジャスコ」として営業を開始した商店街立地の高層総合スーパーのなかで、2022年時点でも同業態のまま営業を続ける最後の店舗であり、1970年代における流通戦争の生き証人でもあったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.