スマホ注文は導入したのに、サイゼはなぜ「配膳ロボット」を導入しないのか(4/4 ページ)
人手不足に悩むファミレス各社でさまざまな取り組みが進む。その中から、今回は“三種の神器”でDXを進めるすかいらーくHDと、注文方式の変更で話題になったサイゼリヤに焦点を当てていく。
全店への展開に至らなかったのは、既に運営の効率化が十分だという判断からだろう。サイゼリヤは業界の中でも特にホールの動きを効率化した企業として知られる。サイゼリヤのホールスタッフは時速5キロ以上の早歩きが基本といわれており、皿を下げるときの持ち手もルール化されているという。徹底したマニュアル化の下で、配膳ロボット導入によるメリットは薄いと判断したのではないだろうか。
また、サイゼリヤではスタッフが複数枚のお皿を同時に配膳する光景をよく見かける。お盆に乗った和定食ではホールとの1往復で1人分の料理しか運べないが、こうしたセットメニューの無いサイゼリヤでは1往復で何人分も運ぶことができる。お皿の構成的にもロボット化の効果は少ないと考えられる。
以上、今回はすかいらーくHDとサイゼリヤのDXについて取り上げた。既に効率化が進んでいるサイゼリヤは配膳ロボットを導入しないものの、セルフオーダーやセルフレジを含むとすかいらーくHDに負けず劣らず、DXを推進しているといえる。
配膳ロボットは、ジョイフル・ココス・デニーズなども導入している。人件費や原材料費が上昇する中、できるだけ価格を抑えながら大量に食事を提供するファミレス業態は省人化の必要性に駆られているのだろう。
労働力を確保するために賃上げが進み、頼みの綱であった外国人労働者も、同じ人口減少に苦しむ中国・台湾・韓国との争奪戦が始まりつつある。業界のニーズに従って、今後は無人決済の普及や配膳ロボットの高機能化が進むだろう。近い将来、ファミレスのホールが完全無人で運営される日が来るかもしれない。
著者プロフィール
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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