万引は防げるか? セルフレジの発展系「Scan&Go」が伸び悩むワケ:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
セルフレジの発展系とも言える「Scan&Go」。専用のスマホアプリで決済できるものも増え、利便性が高まる一方で、普及はいま一つというのが実情だ。Scan&Goが伸び悩む理由とは――。
Scan&Goが抱える難しい課題
Walmartはスマホアプリで行うセルフスキャン決済であるScan&Goを2回挑戦してやめています。
14年にやめた時は処理速度、店内通信電波の問題でしたが、19年にやめた原因は万引でした。Scan&Go導入店舗の多くでは万引防止として抜き打ちのレシート確認をします。ところが、一品一品精緻に確認したのでは本末転倒なので簡易なものにならざるを得ません。
Walmartで当該サービスを担当した元責任者は「100品買った人が40品しかスキャンしていなかったことがある」と語っています。現在、Walmartは有料会員の「Walmart+」会員限定で3回目の挑戦をしています。
最大の食品スーパーKroger(クローガー)が提供していたセルフスキャンアプリ「Scan,Bag,Go」はアプリにクレジットカードを登録した顧客はチェック頻度を減らすなどの対策をしていました。しかし、19年秋以降はサービスを中止しています。
KrogerはSTOP&SHOPのような貸出用バーコードスキャナーも設置しましたが、こちらも現在は見かけなくなりました。
1店舗あたりの年商が150億円超と大人気のスーパーマーケットWegmans(ウェグマンズ)も、モバイルチェックアウトアプリ「WegmansSCAN」を22年9月で終了しました。
店内のさまざまな場所で商品スキャンが行われるScan&Goはセルフレジと桁違いに、スキャン逃れの監視が難しいのです。来店客にとって利便性のあるサービスであるScan&Goですが、意図的な万引以外のスキャン忘れも一定頻度で発生することを考慮すると、根本的な解決策がなかなか見つけられないのが悩ましいところです。
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