仕事中の「おやつの時間」は後ろめたい――“ムダ”を削るばかりの日本が失っているもの:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
「仕事中におやつ時間」「ちょっとコーヒー」といった気分転換に対して、後ろめたいものと思う人は少なくない。しかし、無駄話、無駄な時間、無駄な空間は本当に削ってしまっていいものなのだろうか? 健康経営学者の河合薫氏が考察する。
仕事中の“無駄な時間”について、考えるきっかけになる調査結果が公表されました。
リクルートマネジメントソリューションズが実施した「職場における気分転換と社内交流に関する実態」と、その「満足度」に関する調査です。興味のある方はこちら(「仕事における余白・遊びに関する実態調査」)をご覧いただくとして、私が気になった部分を抜粋、要約して紹介します。
- 6割以上が、業務時間中に「気分転換」を実施。最も多かったのは「おやつを食べたり飲み物を飲んだりする」で81.9%(ほぼ毎日、週数回、週1回)、次いで「雑談」が80.1%(同)。
- 「業務時間内に目の前の業務以外に時間を割くこと」に後ろめたさがあるか、と尋ねたところ、全体の43.1%がある(非常にあてはまる、あてはまる、ややあてはまる)と回答。
- 「余裕のない職場」「冷ややかな雰囲気が流れている職場」「異動による人の入れ替わりが激しい職場」ほど、「後ろめたさ」を感じる傾向が認められた。
- 43%が「食事会や飲み会」を1年に複数回以上実施していている。
――さて、いかがでしょうか。個人的には、想定以上におやつ休憩などの気分転換を実施している人が多く、驚きました。
「無駄話、無駄な時間、無駄な空間」を排除したがる傾向だが……
かつての日本の職場には気分転換におやつを食べたり飲み物を飲んだりする風景はめずらしくありませんでしたし、企業によっては「3時のおやつ」の時間もありました。
しかし、この数年よく耳にするのは「仕事中にお菓子食べるとか信じられない!」「仕事中に“ちょっとコーヒー”とか信じられない」「みんな忙しく働いているのに、無駄話ばっかりしてる!」といった“わが社の働かないおじさん問題”です。
しかも「3時のおやつ」がある職場に勤める女性からは、「女性がおやつを買って、社内に配るとか、もうやめてほしい」という不満をたびたび聞きましたので、てっきり「おやつを食べたり飲み物を飲んだりする」職場はとても少なくなっているのではないかと思っていたのに。いやはや驚きです。
調査対象の半数にあたる50.2%が50代以上で、20代はわずか4.6%だったことも影響しているのかもしれません。いずれにせよ、結果に驚きはしたものの、こういった調査が行われるようになったことをうれしく感じています。
職場の“無駄”は、会社が会社として存続するために極めて重要です。
ここでの無駄とは、無駄話、無駄な時間、無駄な空間で、この3つの無駄があることで社員と社員がつながり、新しいものが生まれるきっかけができます。
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