競合の業績は堅調なのに…… スノーピークがアウトドア市場で大きく落ち込んでしまった理由(3/3 ページ)
スノーピークが苦境に立っている。コロナ禍以前からアウトドアニーズの増大を背景に成長してきたが、23年度は売り上げは前年比で減少。最終利益にいたっては99.9%減となっている。アウトドア市場は堅調なのに、なぜなのか。
ライト層の需要一服と販管費が業績を直撃
スノーピークの苦境が目立つ理由は「低いアパレル依存度」にある。アウトドア企業の好調は、ウエア類の売り上げに支えられているからだ。同ジャンルは、季節ごとに買い替え需要が見込まれるほか、アウトドアブランドの人気も高まっている。街中でもよく見かけ、キャンプや登山以外のシチュエーションで着る人も多い。
スノーピークの事業別売上高を見ると、23年度はアウトドアが約231億円に対して、アパレルは約37億円しかない。近年はアパレルにも力を入れているが、同社の人気商品はやはりテントやマグカップ、調理器具といった頻繁に買い替えないものがメインだ。そのため、需要の一巡が減収につながったと考えられる。
メルカリなどで中古品が出回っていることが話題となったが、ライト層離れも要因の一つだろう。前述の通り、コア層が多いとみられる直営店はむしろ伸びており、自社ECもそこまで落ち込んではいない。
売り上げが減少し、コストも増加したため利益は激減した。23年度の販管費は約142億円で、前年(約131億円)から10億円以上も増えている。人件費の増加に加え、当初は23年度も成長を見込んでいたため、出店による地代の増加が販管費増につながったようだ。そこに海外店などの減損損失も加わり、最終利益がわずか100万円という結果に至った。
スノーピークはファンを獲得すべく、自治体と協力しながら各地にキャンプ場を整備してきた。こうした取り組みはコア層に響いた一方、ライト層の定着にはつながらなかったのだろう。ライト層をつかむには、アパレルなど身近な商品で勝負する必要がある。なお、今後は米投資ファンド・ベインキャピタルと協力し、株式の非公開化を進めるとしている。ベインキャピタルのノウハウを生かしながら、米中で攻勢をかけるようだ。競合も多い中、海外でファンを獲得できるかどうかがカギになるだろう。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。X:@shin_yamaguchi_
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