生成AIが経営分析をサポート 名古屋鉄道の利用法は? 1000時間超の業務削減も:生成AI 動き始めた企業たち(2/3 ページ)
名古屋鉄道は法人向けChatGPTサービスを導入。これまでにグループ400人が利用。業務削減効果は1000時間超を達成した。先端技術を活用し、従来の業務をどのように変革しているのか。
Q. 自社のAI技術の強みは何か
当社では、21〜23年度を対象とした名鉄グループ中期経営計画において「DXの推進」を掲げ、AIをはじめさまざまな手法でグループ全体のDX化に取り組んでいます。
生成AIに関しては、23年7月にSaaS型のChatGPTツール「exaBase 生成AI」を導入し、24年2月末時点でグループ約400人に展開しています。SaaS型を選択した理由としては、プロンプトが学習されない高セキュリティの生成AI環境をスピーディに導入可能だったこと、ログや利用状況、業務削減効果が可視化され定量的な効果が策定できること、頻繁に機能アップデートが行われ常に最新レベルの生成AIが利用できることなどが挙げられます。
利用開始から半年以上が経過しましたが、業種・部門・役職問わず活用効果を挙げており、ユースケースは「経営分析補助」「プログラミング」「多言語一斉翻訳」など多岐にわたります。業務削減効果は本年2月末時点で1000時間超を達成し、さらなる業務効率化や質の向上に期待しています。
また、生成AIに限らずAI全般の活用にも取り組んでおり、カメラのAI画像解析による踏切事故の未然防止を進めています。従前ではセンサーにより、踏切内の人や車の停滞を検知していましたが、これをAI画像解析により実現するもので、23年11月から実運用を開始しています。
センサーは踏切内だけを検知していますが、カメラは踏切の隣接道路も映しているため、踏切周辺の状況をAIが画像解析することでさまざまな事故防止へのアプローチが期待できると考えています。
22年12月には、踏切前方道路の混雑をAIが検知し、踏切侵入前の自動車にETCなどを活用して車内に音声で注意喚起する仕組みを実証実験しました。今後もAIの特徴を生かすことで、踏切の安全性が大きく向上すると期待しています。
Q. 自社の競争優位性をどう確保するか
当社は鉄道業界の中では比較的早期に生成AIの活用を開始しました。これまでの検証で得られた知見をもとに、引き続き当社だけでなく、グループ全体へ生成AI活用拡大を進めます。
生成AIの高度活用のため、社内データと連携可能な生成AI環境を構築する必要がありますし、その先には個人の職種や役割に応じて回答してくれるパーソナライズ型生成AIが求められると考えています。
現状では管理部門での業務利用が大半ですが、(駅員や車掌などの)鉄道現業部門や、お客さま向けサービスでも生成AI活用を検討し、顧客サービス向上と業務効率化の両面を実現したいと考えています。
関連記事
- 生成AIを「利用しない」リスクとは 村田製作所が全社導入した理由
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第10回は、村田製作所を取り上げる。スマートフォンやPCで使われる電子部品の生産・開発は世界でもトップクラスのシェアを誇る同社。長年、DXにも注力し、AI開発にも力を入れる。同社の強みはどこにあるのか――。 - 分析作業、9時間→6分に パナソニック流、生成AIの活用法
「生成AI 動き始めた企業たち」第6回はパナソニック コネクトを取り上げる。これまで9時間かかったアンケート分析業務を6分に短縮できたと発表し、話題を呼んだ同社。いかにして生成AIの業務活用を進めているのか。 - 企画書作り「1週間→1日」に 住友生命の生成AI活用法
住友生命保険は7月から職員約1万人を対象に、ChatGPT技術を基に独自開発したチャットシステム「Sumisei AI Chat Assistant」を導入。これまで作成に1週間を要した企画書が、わずか1日で完成するなどの成果に結びついているという。 - 長文の技術資料を“数十秒”で確認可能に アサヒビールの生成AI活用法
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第12回は、アサヒビールを取り上げる。同社は9月から、生成AIを用いた社内情報検索システムの試験導入を始めた。新たな技術をどのように業務に生かしているのか。 - 電話対応、最大54%の時短に JR西日本の生成AI活用術
「生成AI 動き始めた企業たち」第11回はJR西日本。AIベンチャーと協業し、オペレーターの電話業務にかかる時間を最大54%削減に成功した。今後、生成AI活用にどのような道筋を描いているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.